「じゃあ、どうやって生きていこう?」

 たぶんどこに行ったとしても、そこの規律に従わなくてはいけなくなる。組織で働くとはそういうものですが、これまで会社員をやってきて、私にはたぶんそれが無理なんだと思いました。これは一つの発見で、「じゃあ私はどうやって生きていくんだろう」と真剣に考えるようになったんです。

 そんなとき、当時付き合っていた夫が「今までにない美容雑誌を出したい」と言いだして、デザイナーとして協力することになりました。そうやって2013年に手探りで作り始めたのが、雑誌「髪とアタシ」です。創刊号のときはまだ会社に勤めていましたが、その後退職して夫とも結婚し、夫婦出版社「アタシ社」から発行していくことを決めました。

雑誌「髪とアタシ」は2017年4月時点で第5号まで発行されている。最新号のテーマは「音楽と髪」(写真右)
雑誌「髪とアタシ」は2017年4月時点で第5号まで発行されている。最新号のテーマは「音楽と髪」(写真右)
紙面のデザインはすべて三根さんが担当している。「創刊号とか、今振り返るとお見せできるものじゃないな、と恥ずかしくなります」(三根さん)
紙面のデザインはすべて三根さんが担当している。「創刊号とか、今振り返るとお見せできるものじゃないな、と恥ずかしくなります」(三根さん)

 単なるファッションやおしゃれではなく、「髪ってそもそもなんだ?」というところから見直してみると、世界が全然違って見えて面白いんじゃないか。そんな純粋な思いで雑誌を作ろうとしている彼と出会って、ああ、こういう人と仕事がしたかったんだと気付かされました。

 でもそれは、会社で一緒に働いていた人たちを否定する気持ちでも、大企業など既存の枠組みに対するアンチテーゼでもないんです。どちらのほうがいいといった優劣ではなく、向き不向きがあるだけ。私たちは私たちのやり方で、社会に対して「面白い」「新しい」という発見をどうやって提示できるかを突き詰めていければいいよね、と二人で話しています。一番気が合う人と仕事ができて、今、とても楽しいです。

文/谷口絵美 写真/品田裕美

三根かよこ(みね・かよこ)

合同会社アタシ社 ディレクター・デザイナー。千葉県出身。カナダで7年間を過ごす。リクルートメディアコミュニケーションズ在職中に桑沢デザイン研究所ビジュアルデザイン科を卒業し、2015年4月に夫で編集者のミネシンゴさんと合同会社アタシ社を設立。現在は30代のための社会文芸誌「たたみかた」の編集長、美容文藝誌「髪とアタシ」や書籍のデザインを手がけつつ、企業の外部編集者としても活動する

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