わが子の活躍を見るような喜びと達成感がある

 そうやって、プロジェクトが正式に立ち上がってから打ち上げまでおよそ5年の歳月をかけているので、「あらせ」はプロジェクトメンバーみんなの子どものような存在です。自分たちの子どもが打ち上げられるときは、とってもどきどきしました。

 世界各地にあるJAXAのアンテナからデータをダウンロードして衛星の状況を把握するのですが、打ち上げ直後だけは、どのアンテナからも衛星を確認することができない時間があるんです。

 地上からも見えない、宇宙で今どうなっているのかも分からない。どきどきしながら待つことおよそ30分。アンテナで電波を受信し始めたときは、「うちの子が無事に宇宙に着いた! よかった!」とうれしかったです。

 現在は、観測データを取るための運用計画を立てたり、運用のための手順書を作ったりしています。宇宙にいる「あらせ」が元気に活躍してくれるよう見守る仕事です。「プロジェクトマザー」と呼ばれるのは嫌だなんて言いましたが、メンバーに頼ってもらえるのはうれしいです。これからも興味を持ったことにはどんどん挑戦して、頼られる人になっていきたいと思っています。

文/谷口絵美 写真/夛留見 彩

小川恵美子(おがわ・えみこ)

宇宙航空研究開発機構 宇宙科学研究所 ジオスペース探査衛星(ERG)プロジェクトチーム 開発員。1984年生まれ。大学院では地球惑星科学を専攻し、月周回衛星「かぐや」のデータ解析などを行った。2009年4月JAXA入社。超高速インターネット衛星「きずな」運用などを経て、現在はJAXA宇宙科学研究所ジオスペース探査衛星プロジェクトに所属する。プロジェクトの衛星「あらせ」は2016年12月20日に打ち上げられた。

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