会員数700万人を誇るスマートフォン向けゲーム「ガールフレンド(仮)」の立ち上げプロデューサーであり、29歳でサイバーエージェント初の女性執行役員に抜擢された横山祐果さん。20代のころから数十人の部下を率いてきた横山さんは、チームを頼り、チームに感謝する、とびきりの「お願い上手」でした。

目の前の仕事に没頭していたら執行役員に

 ゲームプロデューサーに就任した当時、私は“ゲーム素人”でした。そんな私が、「私のホストちゃん」「ガールフレンド(仮)」と、次々にゲームを生み出すことができたのは、逆に素人だったことがよかったのかもしれません。分からない、できないことだらけで、周りに頼るしかない状態でしたから。ある意味、開き直って「ここが分からないので教えてください!」とどんどん質問し、自分が詳しくないことはその領域に長けている人にお願いしながら、みんなの力を借りまくりました。決して私が先導したのではなく、チーム全員の力がヒット作を生みだしたんです。

 その後、入社7年目の29歳のときに、執行役員に選任されました。「え、なんで私…?」とびっくりしましたよ。自己アピールやコミュニケーションも下手なほうだし、『しっかりしろよ~』と先輩にからかわれることもあったくらい。“ユーザーに楽しんでもらえるサービスを作りたい”という気持ちだけで目の前の仕事に没頭してきたので、管理職になりたいとも思っていませんでした。この人事に周りも驚き、同時にちょっと笑いが起きていました(笑)。

 社長の藤田は、「初の女性執行役員には、仕事もプライベートも楽しんでいる自然体の女性がいい」と考えていたそうで、「これまで通り、楽しく仕事をしてくれればいいよ」と言われました。自分らしく無理せず会社に貢献していてほしいというメッセージだと受け止めました。

仕事で一番大事にしているのは「ワクワクするかどうか」

 どんな点が「自然体」なのか。私自身はあまり意識したことがないのでよく分からないのですが、あえて言うなら、「自分の気持ちに正直なところ」かもしれません。分からないことは分からないと口にしますし、納得するまで質問します。自分の気持ちに嘘をついて仕事をしても、いい結果は出ないと思うので。

 仕事をする上で一番大切にしているのは、私自身が「ワクワクできるかどうか」。これをやったらどうなるだろうと考えた時に、胸が高鳴ることをやりたい。モチベーションも俄然ちがってきます。

 プロデューサーとしての私のミッションは、良いサービスを作ってヒットを生むことです。届け手である私がワクワクできないなら、ユーザーを楽しませることなんてできません。ですから、少しでもひっかかる点があれば一旦停止したり、進行しているプロジェクトをやめることもあります。

 進行中のプロジェクトをボツにする場合、チームのメンバーには「今こういう状況で、ここがどうしても引っかかるからやめようと思う」と包み隠さずに話し、ごめんなさいと謝ります。少しでも方向がブレそうだと思ったら、そこは私が軌道修正しないといけないと思っています。最終的にうまくいかなかったら、頑張ってくれたみんなの努力が報われないし、チームに迷惑がかかってしまいます。だからこそ、“これをやったら楽しそう!”というワクワク感は大事にしたいし、そこにこだわりを持って仕事をしています。