組織の中で、自分の価値観を大切にして働ける喜び

 4カ月の間に事業計画を完成させることはできましたが、人手がないのはよく分かっていたので、このまま計画を出して私が帰ったら、たぶんそこでこのプロジェクトはストップしてしまうだろうということは目に見えていました。実現まで見届けなければ、成し遂げたことにはならない。だから、会社に戻っても何とか仕事として関わり続けようと心に決めました。

 研修期間が終わった後、東京で公開フォーラムがあり、スピーカーとして登壇しました。会社から社長も来てくれていたので、「私じゃなくて誰がやるんですか!」と、御祓川に関わり続けることを壇上から宣言したんです。自分の腹をくくるためでもあったし、取材も入っていたので、公にしたらやらざるを得ないだろうという戦略でもありました(笑)。

 2016年の2月に復職し、公共コンサルティング本部に異動。御祓川にはサイクリング事業のプロジェクトマネージャーとして行かせてもらえることになり、この1年でモニターツアーを実施するところまでこぎつけました。

書類作りは、クラシックやジャズを聴きながら集中する。ゴールドは河野さんのお気に入りの色。「悩んでいることや1年の抱負、旅行中の日記も1冊にまとめています。書いて整理するのは子どもの頃からの習慣なんです」(河野さん)
書類作りは、クラシックやジャズを聴きながら集中する。ゴールドは河野さんのお気に入りの色。「悩んでいることや1年の抱負、旅行中の日記も1冊にまとめています。書いて整理するのは子どもの頃からの習慣なんです」(河野さん)

 他にも、地域を支援する新しい仕事をつくるための営業活動として、地方行政や民間企業など、さまざまな人たちに会いに行っています。これはとても貴重なことで、なぜなら私のポジションでは、仕事を取ってくるようなことは通常できないんです。「やっていいよ」と、会社が環境をつくってくれていること、組織の中でこうやって自分の価値観を大切にできる道を見つけられたことには、本当に感謝しています。最近ようやく、私の活動に予算をつけると言ってくださるお客様も出てきました。

 以前は周囲と自分を比べて落ち込んだりもしましたが、今は「私はこれでいいんだ」と思えます。コンサルタントといっても、仕事のやり方は一つではありません。私は「河野さんにこれを頼みたい」と言ってくださるお客様との仕事をきちんと温めて、育てていきたいと思っています。

文/谷口絵美 写真/品田裕美

河野麻衣子(こうの・まいこ)

日立コンサルティング 公共コンサルティング本部 シニアコンサルタント。外資系コンサルティング会社、アフリカでのボランティア活動を経て、2012年に日立コンサルティング入社。2015年10月から翌年2月まで、会社を休職し石川県七尾市へ。「ふるさとプロデューサー育成支援事業」の研修生として参加した。2016年2月に復職。

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