Q.お客様との飲食を伴う接待も残業になるのでしょうか?

A.飲食や親睦を主な目的とした接待や会合は残業労時間にはなりません。

 「明確に一部が会議や商談で、その後で『軽く行きますか?』となった場合はきちんと分けることができるので、その一部は残業として申請できます」(佐伯さん)

Q.私はヘビースモーカーのため、喫煙で頻繁に席を外します。後ろめたい気持ちもあるので喫煙時間は残業から差し引いて申告したほうがよいでしょうか?

A.リフレッシュは節度ある時間にとどめたうえで、堂々と残業を申告しましょう。

 「残業を申告しない人が『私は残業手当てをもらっていないから……』と変な言い訳ができてしまいます。ある程度の休憩というのは就業時間に含まれているので、寧ろ手当ては支払う代わりにしっかりと仕事をしてほしい。人間、一日8時間集中して仕事をしたら相当疲れると思うのです。12時間など働いている人は、絶対どこかで息抜きをしているはずです」(佐伯さん)

Q.通勤中や帰宅途中などちょっとした時間を活用してチラシなどのポスティングを行いました。労働時間として認められますか?

A.上司が指揮命令して行った場合には労働時間として認められますが、自分の判断だけで行った場合は労働時間としては認められません。

【大和ハウス工業『タイムマネジメント・ガイドブック』より】

右から日経DUAL編集長・羽生祥子、編集部・小田舞子
右から日経DUAL編集長・羽生祥子、編集部・小田舞子

 「この『タイムマネジメント・ガイドブック』の内容は100%正しいものだとは限らないと考えています。ある程度、信憑性の高い専門書を参考にしつつ、あくまでガイドラインとして提示。個々の事例においては運用でカバーするというスタンスを取っています」(佐伯さん)

 さらに、出退社時刻のリアルタイム登録の徹底化、パソコンの「ロックアウトシステム」導入、「サプライズコール作戦」(決められた退社時刻を過ぎてから人事部が各事業所に抜き打ちで電話をする)などの対策を実施。

 特にパソコンのロックアウトシステムを導入した結果、「残業時間を控えめに申告する」「出社登録をする前にパソコンで仕事を始める」「退社登録をした後に仕事を続ける」といった行為が減ったという。

「これらの取り組みの効果は高い。正式な統計は取っていませんが、長時間働くことへの誇りも含めて“不夜城”という言葉もあった10数年前と比べると、社員の長時間残業は肌感覚で約7割は減っています」(佐伯さん)

 「ロックアウトがなかった時代は夜も仕事ができてしまうので、『仕事があったら当然遅くまでやるんでしょう?』という雰囲気がなかったといえば嘘になります。以前であれば、私もそういった働き方をしていたかもしれません」(人事部 人事・厚生グループ グループ長 松本由香子さん)

 「早く帰らないといけないからといって、業績を落としていいよという甘い会社ではありません。それはそれ、これはこれ。高い目標を持ってそれを達成するために社員が一丸となっています」(松本さん)という言葉通り、2016年3月期の連結売上高、営業利益、経常利益が過去最高となった。

 長い時間をかけて「長時間労働の削減」を徐々に社内に浸透させ、結果につなげてきた。その姿から学ぶことは多い。

会場には、企業人事部を中心とした参加者が集まった
会場には、企業人事部を中心とした参加者が集まった

取材・文/日経DUAL編集部、小田舞子 撮影/鈴木愛子