キャリア平等の実現の鍵は企業文化の変革

 そこでアクセンチュアでは「アクセンチュアグローバル調査」と題し、「女性の躍進を成功させている企業の傾向」を調査しました(日本の700人以上を含む世界34カ国2万2000人以上の働く男女を対象に、男女同数で異なる規模の企業のあらゆるキャリアレベルの3世代[ミレニアル世代、ジェネレーション世代、ベビーブーマー世代]にオンラインでアンケートを実施)。

 その結果、「男女のキャリア平等を育む40の要素」が特定できたといいます。40の要素を一部抜粋すると、

【経営層】
・ジェンダー・ダイバーシティ(女性の活躍推進)を経営陣の優先事項に設定している
・男女間賃金格差の縮小についての目標またはゴールを公表している

【組織】
・女性を自社に惹きつけ、継続的に雇用し、成長を促す取り組みに尽力している
・女性のネットワークが存在している
・女性のネットワークを男性にも開放している
・上級管理職の女性の割合が、過去5年間で増加している

【社員】
・企業文化に合わせて服装などを変えるよう要求されない
・従業員のスキルアップのためのトレーニングを提供している
・ハラスメントについて、負担感なく会社に報告できる

出典/アクセンチュア Getting to Equal 2018

 などといった要素が挙げられ、柔軟で臨機応変な企業文化が浸透していることが分かりました。

 この結果について、アクセンチュア インクルージョン&ダイバーシティ統括 執行役員 堀江章子さんは次のように述べています。

 「女性のキャリアアップを支える土壌がある企業では、男女ともに活躍していることが明らかになりました。会社全体が活性化することで、女性だけではなく、男性も昇進の可能性が高まります。男女のキャリア平等を実現するには、企業文化の変革が鍵となります」(堀江さん)

 アクセンチュアでは2006年に女性活躍推進組織である「Japan Women’s Initiative」が発足し、10年以上たちますが2007年と2018年2月時点を比べてみると、女性社員数は5倍に増え、女性管理職数は4倍に、そして、子どもがいる女性は9倍、そして女性のマネジング・ディレクター(経営幹部)数は10倍――と大きな飛躍を遂げています。

女性活用施策の成果
女性活用施策の成果
アクセンチュアでは、2006年に女性活躍推進組織「Japan Women's Initiative」が発足した後から、女性活躍が進んでいった 出典/アクセンチュア

 一見、遠回りなようでも時間をかけて、「女性活躍」の土壌を育んでいくことが何より効果的だといえそうです。

 また、これから転職したり、仕事を探したりしている人は企業の「ファスト・トラック」に注目して見るとよいかもしれません。

 「ファスト・トラック」とは「5年以内に管理職に昇進するなど、いち早くキャリアを前進させている女性」のことで、日本では85%のファスト・トラック女性はダイバーシティ目標を掲げる企業に勤務をしていました。

ダイバーシティ目標の表明
ダイバーシティ目標の表明
日本の85%のファスト・トラック女性は、ダイバーシティ目標を掲げる企業に勤務。目標を掲げていない企業の2倍 出典/アクセンチュア Getting to Equal 2018

 日本ではすべての女性のうち46%が「ダイバーシティ目標を設定している、組織内でのみ公表」「設定している、組織外でも公表」の企業で働いていますが、ファスト・トラック女性の実に85%が「ダイバーシティ目標を設定している、組織内でのみ公表」「設定している、組織外でも公表」の企業を選んでいました。昇進などキャリアに意欲的な女性は、経営層のダイバーシティ目標設定にまで注目していました。

 日本ではまだ男女のキャリア平等、賃金格差の縮小が実現できていないため、自分からダイバーシティ目標を掲げる企業を探すといった努力も必要となりそうです。

文/三浦香代子 写真/PIXTA データ出典/アクセンチュア Getting to Equal 2018