「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」(以下、「女性活躍推進法」)は、果たして女性にとって、本当の追い風となるのでしょうか? 働く女性が知っておきたい「女性活躍推進法」のポイントを社会保険労務士の佐佐木由美子さんが解説します。

大きな壁を感じる女性たち

 急速な少子高齢化の進展により、女性の労働力は日本社会を支える貴重な戦力として期待されています。一方で、女性の社会進出を阻む要因も多く、仕事と家庭生活との両立が困難になるという理由から、第1子出産を機に約6割の女性が退職してしまう現実があります。

(c)PIXTA
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 また、管理職に占める女性の割合は11.3%(平成26年総務省労働力調査)と国際的に見てもかなり低い水準にとどまり、働く場面において女性の活躍は不十分と言わざるを得ない状況といえます。

 職場における女性活躍が進まなかった要因として、業種にもよりますが、企業が積極的に女性を採用してこなかったことや、女性の育成に意識が及ばず教育訓練の機会が少ないことなど、複合的な要因が挙げられます。

 働き続けることを選んだ女性たちも、昇進についてはどちらかというと消極的で、上位のポストを望まない傾向にあります。「管理職になりたくない」という声を、これまで数えきれないほど聞いてきました。仕事は頑張りたいけれど、自分の力だけではどうにもできない大きな壁を感じている女性はどれほど多いことでしょうか。

女性活躍推進法とは

 そうした現状を打破し、女性が自らの意思によって職業生活を営み、女性の個性と能力を十分に発揮して活躍できる環境を整備するために、「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律(女性活躍推進法)」が公布されました。

 労働者301人以上の企業は、2016年4月1日までに自社の女性活躍状況の把握・課題分析、行動計画の策定・届出、情報公表等が義務付けられています(300人以下の企業は努力義務)。

 女性活躍推進に向けた行動計画は、2016年4月1日から向こう10年間、各社の状況に応じて、2年~5年に区切り、定期的に進捗状況を検証しながら確認を行っていくことになっています。

 すでに自社の行動計画内容や今後の方針についてご存知だという方もいらっしゃることでしょう。よく分からないという方や、他社の状況がどうなっているのか気になる、という方は、女性活躍推進法に基づく企業の行動計画や情報公表など、女性の活躍状況が見られるデータベースをご利用になってみてはいかがでしょうか。

女性の活躍推進企業データベース
http://www.positive-ryouritsu.jp/positivedb/

 情報公表項目には、採用者に占める女性労働者の割合、労働者に占める女性の割合、男女別の育児休業取得率、1カ月あたりの平均残業時間、年次有給休暇の取得率、管理職に占める女性労働者の割合、役員に占める女性の割合、男女別の再雇用・中途採用の実績などがあり、少なくとも一つ以上の項目を公表する必要があります。情報公表が多ければ多いほど、女性の活躍に積極的な企業だと判断できるでしょう。

 こうした情報が企業の競争力向上、そして優秀な人材の確保にもつながっていくため、企業側としても真剣に取り組まざるを得ない状況に迫られています。

 行動計画は、一つ以上の数値目標を取り入れることになっていますので、どれだけ女性管理職が増えたか、女性採用を行っているか、といった数値で成果を判断せざるを得ない側面もあります。わかりやすい反面、名称ばかりの管理職といわれてしまうようなポストが増えかねない危惧もあります。表向きは女性が活躍していると言いながら、実は旧態依然とした職場のまま、ということのないよう本気の取り組みが必要です。