広がるキャッシュレス決済

 お買い物をするときには、モノやサービスと引き換えにお財布から取り出した現金を手渡す。少し前までは毎日のように経験するスタイルでしたが、近年はどんどん変わりつつあります。現金のやり取りなしに支払いを完了する「キャッシュレス決済」が急速に普及してきているためです。

 「キャッシュレス決済」は小銭やお札を使わずに支払う方法全般を指す言葉です。日本で主に使われている方法だけでも、銀行の口座振替や送金サービスの他、クレジットカードや電子マネー、デビットカード、収納代行(携帯電話料金と一緒に請求される各種サービスの支払いやスマートフォンアプリなどの課金)など多岐にわたります※1。その種類や使える場所は、フィンテックの発展によって個人間での送金や、スマートフォンを介した支払いなど、さらに拡大しています(参考:「お金のプロが教える便利なフィンテックサービスって?」)。

 実際に、キャッシュレスで決済される金額も増加傾向にあり、クレジットカードや電子マネーなどによる支払額が民間最終消費支出に占める割合は、2008年の11.9%から2016年には20%と、2倍近く伸びています(内閣府「2016年度国民経済計算」)。

 ただ、これは世界的に見ればまだまだ低い水準です。キャッシュレス決済の割合は韓国では約9割、中国で約6割、欧米諸国でも4~5割を占めています(銀行の口座振替や送金サービスは含まず)※2。諸外国と比べて十分とはいえない日本の決済システムの環境整備を求める声が高まり、政府は「未来投資戦略2018」で「今後10年間(2027年6月まで)に、キャッシュレス決済比率を倍増し、4割程度とすることを目指す」ことを目標に掲げています。

 キャッシュレス決済の推進により消費者の安全性、利便性、そして、商取引の活性化や新たなビジネスの創出が期待できること、また2020年にはオリンピック・パラリンピック東京大会が開催されることも視野に入れ、国を挙げてキャッシュレス決済を推進する方策が採られています※3。そんな背景もあり、近年は新しい決済サービスが次々と登場しているのです。

※1 参考:国民生活センター キャッシュレス経済入門(PDF)
※2 出典:経済産業省「キャッシュレス・ビジョン」(PDF)
※3 出典:経済産業省「キャッシュレス化に向けた方策についてとりまとめました」(PDF)