住宅のチラシの数字のしくみ

 低金利が続いている今、「住宅は今が買いどき!」などと聞くことがよくありますよね。上司や同僚の中にも、「家賃を払うより住宅ローンを借りる方がおトク」と考えて、住宅を買った人がいるかもしれません。

 「今がチャンス」などと言われると、思わず自分も買ったほうがよい? と思うでしょう。ですが、焦りは禁物。住宅は教育・老後とともに「人生の3大支出」ともいわれています。ですから、住宅ローンのしくみ、ローンを返せるかどうか? そして、そもそも家を買う必要があるのかどうかをよく考えてみましょう。

 家を買うときには、ほとんどの人が住宅ローンを借りて購入します。ローンを借りるときには金利がつきます。住宅ローンの金利には、大きく分けて3つのタイプがあります。

 借入中の利率が変わらない「(全期間)固定金利型」と、途中で見直される「変動金利」、そして2年、5年、10年などの一定期間だけ金利水準が固定される「固定金利特約型」です。金利が固定される期間が長いほど、金利の水準が高い傾向にあります。

 同じタイミング、同じ条件で借り入れるなら、一般的には全期間固定金利が最も金利が高く、固定金利特約型、変動金利の順で低くなります。2017年6月現在の住宅ローンの借入金利は、変動金利で年0.5%台~0.7%台であるのに対して、35年の長期固定金利であるフラット35で年1.1%弱~2%程度です。

 いずれにしても、これは過去の推移でみるとまれに見る低い水準です。

 とはいえ、金利の種類が何なのか? 金利水準がいくらなのか? によって、月々にいくら支払うのかが大きく変わります。

 例えば3000万円を年1.5%の固定金利で借りて35年で返済すると、月々の返済額は約9.2万円になります※1。一方で、同じ3000万円を変動金利で借りたとしましょう。現在の水準が年0.5%とすると、月々の返済額は約7.8万円になります※2

 ただし、変動金利の場合は半年ごとに適用金利が見直され、月々の返済額も5年ごとに見直されます(ただし、元利均等返済の場合、変更前の返済額の125%までが限度)。今は月々約7.8万円でも、5年後には返済額が変わり、今後の金利の動向によっては月々の返済額がアップするリスクもあります。

 ところが、将来に金利がいくらになるのかは、誰にも正確な予測はできません。ですから、住宅のチラシには、現在の金利水準がずっと続くと仮定した返済額が記載されていることがあります。

 「月々8万円以下!」などと書かれているとき、よく読むと、それは今最も金利水準の低い変動金利をベースに、その条件のまま35年間で返済する前提で算出されていることがあります。

 もし、実際にその条件で借りたら、当初の5年間は確かに月々8万円以下で済みます。しかし今後、金利の水準が上がっていったら、住宅ローンの月々の返済額は9万円、10万円になるかもしれないわけです。

 今は歴史的な低金利ですから、将来の長い返済期間の中で、金利が上がっていく可能性は十分にあります。チラシをパッと見たら、「月々8万円以下なら、そんなに高くないかも?」と思うかもしれませんが、実際にはずっとそのままではいけないリスクも、十分に認識しておきましょう。

※1 フラット35、全期間固定1.5%、借入期間35年、ボーナス払いなし、元利均等返済、融資手数料・保証料・団体信用生命保険料を考慮しない場合
※2 金利0.5%、借入期間35年で金利水準が変わらないと仮定、ボーナス払いなし、元利均等返済、融資手数料・保証料・団体信用生命保険料を考慮しない場合