病気やケガ、休業をカバーできる保険って何?

 これら公的な制度を利用しても、もしも病気やケガで仕事を休んだら生活が立ち行かなくなりそう、家計自体には問題なくても精神的な不安が大きい、と思う場合には、別途の備えを検討してもよいでしょう。

 なお高額療養費の対象になるのは、健康保険が利く治療を受けたときの診察代や検査代、薬代、手術費用などです。先進医療など最先端の医療技術を用いた治療の費用、差額ベッド代、食事代、入院のための日用品などの費用は対象外です。全額が自己負担になりますから、いざというときの治療の選択肢を広げておきたい、自己負担をできるだけしたくないと思う場合も、ゆとりをもって備えておくと安心です。

 例えば民間の生命保険には、病気やケガで入院や通院、手術などをしたときに給付金を受け取れる「医療保険」や、病気やケガが原因で入院・休業したときに、収入を補填するための給付金を受け取れる「就業不能保険」や「所得補償保険」があります。

 いずれも多くの保険会社がさまざまな商品ラインアップをそろえており、一口に「医療保険」といってもその対象は多岐にわたります。入院の日数に応じて「1日当たり○千円」のような給付金が支払われるもののほか、入院の原因が子宮・乳房など女性特有の病気の場合には給付金額が増額されるもの、入院をした時点で、日数にかかわらずまとまった給付金が支払われるもの、がん、急性心筋梗塞、脳卒中など特定の病気と診断される、あるいは診断後に入院した時点でまとまった給付金が支払われるものもあります。また、保障の対象をがんに限定したがん保険もあります。

 就業不能保険や所得補償保険は、病気やケガが原因で仕事ができない状態が続いたときに「1カ月当たり○万円」のような給付金を受け取れます。つまり、お給料収入がダウンした分を保険でカバーできるイメージです。ただし、給付金を支払う対象に当たる「仕事ができない状態」かどうかの判断は保険会社が行います。一般的には入院しているか、医師の指示によって自宅で療養に専念していることを指しますが、その原因となった病気の種類によっては対象外になることもあります。例えばうつ病などメンタル系の病気の場合は対象外とする保険会社が多いです。

会社で案内される団体保険も活用できるかも

 以上でご紹介した保険は、主に生命保険会社で取り扱っており、自分で保険会社や保険代理店に申し込みます。一方で、お勤め先を通して契約できる保険を扱っているところもあります。これを「団体保険」といいます。

 団体保険は、その企業やグループに勤めている従業員のみを対象に提供している保険です。ですから、一般向けに販売されている保険とは商品内容が異なりますが、基本的な内容は類似しているものも少なくありません。ラインアップはお勤め先によって異なりますが、医療保険は多くの企業が取り扱っており、なかには就業不能保険を取り扱うところもあります。

 一般向けの保険との大きな違いは、契約の手続きをお勤め先で行い、保険料の支払いを給与天引きで行うことです。また、多くは契約期間が1年など短期間で、継続する際には手続きをして更新するしくみになっています。

 さらに、一般向けの類似商品に比べて月々の保険料が割安なこともあります。これは、加入する人が特定の企業の従業員に限られることから、さまざまな環境や職業などの人を含む広い一般向けに販売する場合に比べて、保険金・給付金を支払うリスクが限定される場合があるためです。

 もし、お勤め先の団体保険の中に希望に合うものがあれば、検討してもよいでしょう。