医療費の負担は「高額療養費」で抑えられる

 もう一つ、公的な健康保険には「高額療養費」という制度もあります。これは、1カ月にかかった医療費の自己負担額が高額になった場合に、一定の金額(自己負担限度額)を超えた分があとで払い戻される制度です(※)。「一定の金額」は収入によって異なります。たとえば、おおよその月収(標準報酬月額)が26万円以下なら(住民税非課税世帯を除く)、5万7600円です。

 高額療養費の対象になるのは、健康保険がきく治療を受けたときの診察代や検査代、薬代、手術費用などです。差額ベッド代、食事代、入院をして購入した日用品などの費用は対象になりません。

 例えば、月収20万円の人が入院をして、診察代と薬代などに合計10万円、差額ベッド代に3万円を自己負担した場合には、10万円分が高額療養費の対象になり、あとで4万2400円が戻ってきます。最終的な自己負担額は5万7600円と3万円を合計した8万7600円になります。

 こうしてみると、もしも会社員の方が病気やケガをしたときには、その医療費の出費は高額療養費で、お給料のダウンは傷病手当金で、ある程度抑えられることが分かりますね。

 なお高額療養費は、公的な健康保険に加入している人はすべて対象になります。アルバイトなど非正規の方も所定の要件を満たし、お勤め先の健康保険に加入していれば対象になります。自営業やフリーランスの人も、国民健康保険に加入するか、健康保険に加入している夫などの扶養に入ることで対象になります。

 これに対して、傷病手当金はお勤めの方本人が利用できる制度です。健康保険に自身で加入しているアルバイトの方は対象になりますが、扶養に入っている方や、自営業やフリーランスの方には傷病手当金の制度はありません。

※ 医療費が高額になることが事前にわかっていれば、「限度額適用認定証」という書類をお勤め先で発行してもらい、医療機関の窓口に提出しておくと、1カ月に窓口で支払う医療費が自己負担限度額(この例なら5万7600円)で済みます。