「女性が出産後も働き続けるためには、仕事と子育てを両立できる環境と共に『信頼貯金』が必要」と提唱するのはShift社長水澤直人氏だ。「どんなに両立支援の制度が充実した会社であっても、ワーキングマザーとして働く上で、職場からの理解、周囲の人の協力がなければ、働き続けることはできません。会社に自分の実力、貢献を認められ、会社から『出産後も働き続けてほしい』と思われるような信頼関係を築くこと、それを我々は『信頼貯金』と呼んでいます」

仕事と子育てを両立したいなら「信頼貯金」は大切

 「信頼貯金」があれば、職場からの協力を得やすくなる。「子どもが熱を出して急にお迎えに行かなくてはならない、といった状況であっても、『信頼貯金』のある人であれば、『早く帰ってあげて』と快く送り出してもらえます。今のところ、結婚、出産の予定がなくても、長く働くこと考えるならば、『信頼貯金』をためておくことが大切です

 では、転職先で「信頼貯金」をためるためには、いつ転職するのがベストなのか。

(C)PIXTA
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 「理想は出産の3年前までです。転職後、少なくとも1~2年は働き、一通りの仕事ができるようになってから出産する方が、復職しやすいように思います」(インテリジェンス川嶋由美子氏)。ライフイベント後も転職先で長く働き続けたいと考えるなら、「信頼貯金」をためる期間を意識して転職時期を考えたい。

育休中転職がきつい理由

 長く働き続けるために、「産育休後、仕事と子育てが両立しやすい会社に転職すればいい」と考える人もいるだろう。実際、産育休中は、じっくりと考える時間ができることもあり、改めて自分のキャリアを見直したり、復職後、仕事と育児との両立ができるかどうか不安になるなど、転職を考える人が多いという。しかし、Shiftの松本恵氏は「育休明けの転職はおすすめしません。ママとしても1年生、新しい職場でも1年生でスタートするというのは、なかなか厳しいものがあります」と話す。当然ながら、企業側も、仕事の能力も未知数なうえに、いつ保育園から呼び出しが来るか分からないといった人の採用は敬遠しがちだ。

 といっても、ワーキングマザーは転職できないということではない。「時間的制約があったとしても、それまでの仕事経験やスキルや子どもの年齢、仕事と両立できる環境が整っているかどうかなど、総合的に判断して、きちんと働いてもらえそうだ、となればワーキングマザーでも好条件で転職することが可能です」(インテリジェンス川嶋由美子氏)。出産後に転職を考える場合は、まずは復職して、安定的に育児と仕事の両立ができる環境を整えてから転職活動に動き出す方が賢明だ。