「無理せず、ラクに、自分らしく」は十分可能

 「ゆるく働く=『ルーティンワークを淡々と』『現状維持で安住する』という意味なら厳しくなるでしょうね。でも、ゆるく=『無理せずラクに』『自分らしく楽しく』なら十分可能ですし、そうした方向に考え方をシフトしていくことでハッピーな働き方ができるようになると思いますよ」

 そのためには、どうすればいいのでしょうか?

 「自分で考えたり、工夫をすることが大切になってくるため、普段からそうした癖をつけておくことです。例えば、今やっている業務をもっと楽にするにはどうしたらよいか、工程を減らすにはどうしたらよいか、この仕事は誰のためにやっているのか、もしかして不要ではないかなど、当たり前にやっている仕事について考えてみる癖を付けましょう。面倒な業務はこれからAIが引き受けてくれるわけですから、自分自身をもっと楽しくする、ワクワクできることに目を向けてみるのです。『何かを生み出すクリエーティブなことは私には無理』と思うかもしれませんが、難しく考える必要はありません。いろんな人が考えたことをアレンジしたり、発展させることで、新しいものが生まれるし、スキルもどんどん伸びていきます」

面倒なルーティンワークはAIに任せて、もっと仕事の工夫を楽しめるようになる (C) PIXTA
面倒なルーティンワークはAIに任せて、もっと仕事の工夫を楽しめるようになる (C) PIXTA

 こうした時代だからこそ、「立ち止まって自分のキャリアについて考えてみるいい機会」と錦戸さんは強調します。「今は変化のスピードが速いため、10年前の働き方と今の働き方が全然違うように、5年先、10年先という長いスパンで見るのが難しくなってきています。まずは『3年先を考えてみる』といいでしょう。少し先を意識して、ある程度柔軟に対応できるように心づもりしておくといいですね。変化は自分を成長させるものですから、むやみに恐れず、むしろ楽しむくらいの気持ちを持ってほしいと思います」

 では、具体的にどんなことから始めればいいのでしょうか。「今、何かを変えたいと思っていたり、現状にモヤモヤしたりしている人は、次のことを試してみてはいかがでしょう? (1)勉強会や趣味の会でロールモデルを探してみたり、さまざまな価値観に触れてみる。(2)自分の強みや好きなことを整理してみる。(3)転職活動の準備を始めてみる。キャリアの相談に乗っていると『転職が怖い』という人もいますが、『転職』と『転職活動』は違います。転職活動をしたからといって必ず転職しなくてはいけないわけではありません。転職活動は自分を知り、社会を知るために非常に有効な手段です。それ自体が自分を大きく成長させてくれるんですよ」と錦戸さん。

 次回は、「転職が不安・怖い」人に、モヤモヤを解消して一歩進むための方法と、転職活動が持つ大きなメリットを紹介します。

文/西尾英子 写真/PIXTA

プロフィール
錦戸かおり
錦戸かおり
キャリアカウンセラー。2級キャリア・コンサルティング技能士。国家資格キャリアコンサルタント。正社員の転職を支援するコンサルタントに従事した後、2003年に独立。個人のキャリア・カウンセリングを中心にセミナーや講演、企業での面談を行う。内的キャリア(やりがい、働きがい)重視のカウンセリングを得意とし、長期キャリアのアドバイスが定評。「働く女性が35歳の壁を乗り越えるためのヒント」(河出書房新社)。オフィシャルサイト