人間の心の優しさに触れ、とにかく泣ける本

「太陽の子」
灰谷健次郎著
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 子どもの頃、両親に薦められて灰谷健次郎さんの作品を読んでいました。社会人になって再び読み返し、泣けて泣けて仕方なかった名作です。「沖縄と戦争」という重いテーマを扱っていますが、戦争を「知る」ことの大切さを教えてくれると同時に、人間の心の優しさに触れられる作品です。

 主人公で小学6年生のふうちゃんが傷つきながらも、身近な人の苦しみや悲しみと向き合い、人の痛みを分かろうとする。心に寄り添おうとする。真っすぐで、強くて、美しくて、尊い。その心に触れて、後半から最後まで何度も何度も涙してしまいます。特にふうちゃんの手紙がでてくるあたりからはずっと涙がこぼれっ放し。

 心に残っているのは、沖縄戦で何があったのかを知りたいと、ふうちゃんが担任の先生に宛てた手紙の一節。「知らなくてはならないことを、知らないで過ごしてしまうような勇気のない人間に、わたしはなりたくありません」。自分たちの命は、亡くなってしまった人たちの苦しみの上に成り立っているという歴史をふうちゃんが懸命に学び、成長していくのです。

 「太陽の子」には、「肝苦りさ(ちむぐりさ)」という沖縄の言葉が出てきます。「私も胸が痛い」という意味で、人の痛みを自分のものとして胸を痛め、自分も一緒に悲しむときに使います。記者として「弱い立場の人に寄り添う」ことを信条にしている私にとっては、読むたびにその原点に立ち返らせてくれる大切な一冊です。

 戦争の記憶が薄れ、戦争を体験者として語れる人が少なくなっている今こそ、あらためて多くの人に、さまざまな世代の人に読んでほしいと思います。戦争というテーマではありますが、全編神戸の言葉で文章も柔らかくてとても読みやすいです。人間の心の優しさに思いっ切り触れたい人におすすめです。

雷に打たれたような衝撃を受けた「原点」の本

「若いあなたへ!」
千葉敦子著

 この本との出合いは、大学2年生の時。当時、私は日本に上陸したばかりのラクロスを普及するために一生懸命でした(詳しくは「小西美穂が『ラクロス界のレジェンド』と呼ばれる理由」)。当時の私は、大学卒業後の自分がどうなりたいのか、将来を描けておらず、立ち上げたラクロスをスポーツとしてどうやって日本に根付かせるかで頭がいっぱいだったのです。

 読んだ時は、雷がドドーンと落ちてきたような衝撃を受けました。ジャーナリストとして海外で活躍している著者の千葉敦子さんの「パイオニア魂」に心が揺さぶられました。当時(1990年ごろ)は、女性の総合職採用も少なかった時代。目指すワーキングウーマン像やロールモデルがなく、「なりたい自分」を全くイメージできませんでした。だからこそ「女性だって、志を高く持てば、道なき道も進めるのだ」という熱いメッセージが胸に染みました。「努力すれば可能性は広がっている」「志と目標を高く持ち、今できることから第一歩を踏み出すことが大事」という言葉に勇気をもらえ、私自身の「チャンスをつかむためには準備が大事」という信念の礎になっています。

 出版当時と今の働く女性の環境は全く違います。読者の皆さんには、もしかしたら雷が落ちるほどの衝撃はないかもしれません。ただ、女性の活躍が難しい時代に、フロントランナーとして国際舞台で活躍の場を広げていった女性がいる。そして、彼女の背中を追って、駆け抜けていった女性たちがいる(私もその一人です)。そんな、働く女性たちが歩んだ歴史を感じられる一冊かもしれません。

 この本に感銘を受けた当時、千葉敦子さんの他の著書を数冊買って読みました。生き方に共鳴できる人に書籍を通して出会ったら、同じ著者の本を読んでみるとさらに視野が広がります。これも、読書の醍醐味ですね。

文/日経ウーマンオンライン編集部 小西さん写真/稲垣純也

【働く女性の共感を呼ぶこの連載が書籍になりました!】

読者からは「お守りのような本」「読後のスッキリ感がすごい」と絶賛の声
 
一見キラキラに見えるキャスター小西さんのキャリア。でも実は、突然の辞令で出向、36歳で正社員→契約社員、初のキャスターで批判殺到、41歳で襲ってきたひとりぼっちの寂しさ…とデコボコ道でした。自分にしかできない仕事のつくり方やチーム力を高めるコツ、行き詰まるモヤモヤ期の脱出法、11歳下の男性との結婚に至った40代からの婚活術は、悩める女性たちから大反響。どんな立場の人でも、デコボコ人生を歩むためのヒントが必ず見つかります。


「小西美穂の七転び八起き」1400円/日経BP社
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