35歳で未経験の大役 不安を抱えながらも

――田原さんといえば、有名討論番組「朝まで生テレビ!」で知られる大物ジャーナリストですね。

 私はとっさに「それは、とてもできません。私には無理です」と返しました。どんな論客もバッサバッサと鋭く切り込む姿がカッコいいとは思えても、自分も同じようにできるとは到底思えませんでした……。

 状況をのみ込めない私を前に、二人は「大丈夫、大丈夫」と繰り返すんです。「相手がちゃんと質問に答えていないと思ったら、政治家の話を途中で切っても大丈夫。『ちゃんと答えてください』って素直に言えばいい。とにかく思うようにやってみればいいんだから」と。

 この話を受けた時の私の年齢は35歳。しかも、「系列会社から出向中」という身分です。本社の社員ではない、番組未経験の若い政治部女性記者の抜てき。今考えても、異例中の異例だったと思います。

 開口一番で「無理です」と返した私でしたが、どういうことか、食事が終わる頃には、司会を引き受けることで話がまとまっていました。番組開始まで1カ月間しか時間はなく、テレビカメラで話すための訓練をじっくり受ける余裕もありません。

 それでも、なぜやってみようと思えたのか。やはりこの時も、「まだ見ぬ世界に挑戦したい」という気持ちが不安に勝ったのだと思います。

――小西さんを抜てきしたお二人は、当時の起用理由についてなんとおっしゃっていますか?

 はい。今回のインタビューを受けるに当たって、いい機会だと思って二人に聞いてきました! 当時は余裕がなくてとても聞けませんでしたが、10年以上たった今だから、私も聞いてみようと思って。

 藤田さんはその後も私が司会を務めた番組の構成作家を務められ、キャスターとしての私を育ててくださった恩人。初対面の私の第一印象については「この子は大丈夫だと思った」そうです。

 その理由はなんと「すしを全部たいらげていたから」(笑)。私、「無理です~無理です~」と繰り返しながら、ちゃっかりウニなんかも頼んじゃってたそうです。全く覚えていませんでしたが、どうやら「度胸がある」と思われたようです(笑)。

私、ちゃっかりウニ注文してたみたいですね…
私、ちゃっかりウニ注文してたみたいですね…

 藤田さんは、私と同じ読売テレビ出身の辛坊治郎さんを初めて日本テレビの「報道特捜プロジェクト」のメインキャスターに起用したメンバーの一人です。すしを完食する度胸に加えて、「あえて型破りのキャラクターを打ち出したかったし、小西には事件取材経験で育んだ「『本質を追求する目』があると信じられた」のが、私の起用理由だったそうです。

――小西さんならではの持ち味をしっかりと見極めた上での起用だったんですね。