願いは一つ、「ありのままの私を好きになって」

 だから彼女は、ありのままの自分を愛してほしかったのです。奇しくもこれは、ブリジットが望んでいたことでもあります。二股男のために減量し、タバコもお酒も甘いものも絶っていたわけですが、そんな作られた自分ではなく、ぽっちゃりしてても自堕落でも、本当はありのままの自分を受け入れてもらいたかったのです。

 だから幼馴染の男がありのままの君が好きだといってくれたとき、心が大きく揺れたのです。これは多くの女性が望むことなのではないでしょうか。女性たちは、男性に気に入られようと皆無理をしているのです。ダイエットをし、窮屈な服を着て、かわいい子ぶる。でも、本当はありのままの君がいいといってくれる男性を待ち望んでいるのです。

 その証拠に、結婚するとありのままの姿に戻ってしまう人も少なくないでしょう。でも、だからといって離婚なんてことにはなりませんよね。最後は、ありのままの自分を好きになってくれた人と結婚しているはずだからです。ブリジットもおそらくそんな選択をしたのでしょう。

 多くの女性がブリジット・ジョーンズに共感するのも、ありのままを貫こうする彼女の素直さに引かれるからだと思います。ただ、それでも恋する女性は必然的にきれいになっていくものです。ここが女性の素敵なところです。幼虫がきれいな成虫へと変化するように。一般的にこういう場合、イモムシが美しい蝶に変化する例を出すのですが、ここではあえて違う例を出したいと思います。もちろん、そう、ヤゴが美しい羽根を持った蜻蛉に変化するように……。

ブリジット・ジョーンズの日記
<ストーリー>
「ありのままの君が好きだ!」 ヘレン・フィールディング原作のベストセラー小説を映画化し、32歳の独身女性“ブリジット・ジョーンズ”の姿に世界中が笑って泣いた、名作ラブ・コメディ。

販売元:ジェネオン・ユニバーサル

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文/小川 仁志