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おそ松さん人気に考える性と暴力の普遍性

2016年4月7日

人気アニメ「おそ松さん」を、哲学者があかるく読み解く!

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「哲学」ってむずかしいことだと思っていませんか? 「哲学」とは、「ものごとの正体を知ること」。哲学者の小川仁志さんが、身近なことを題材に分かりやすく哲学の視点から読み解きます。TVアニメ「おそ松さん」最終回を迎えましたね。「おそ松ロス」になっています・・・。

性と暴力のギリギリが生み出す笑い

 現代の若者が、昭和アニメのリバイバルである「おそ松さん」を熱狂的に支持する背景には、いくつかの普遍的な要素があります。第一にそれが、笑いの持つ普遍性であることは間違いありません。しかしそのほかにも、性や暴力の普遍性が潜んでいることに着目する必要があります。

 たしかにギャグ漫画にはこれらの要素がつきものです。ただ、「おそ松さん」の場合、その部分が顕著であるように思います。そこがこのアニメを現代的たらしめており、また面白くしている原因なのではないでしょうか。性に関しては、兄弟の自慰行為をテーマにしたり、平気でトト子に「AVに出てたの?」などと聞いたり、また暴力に関しては、殴って血が噴き出したりするどころか、下品な行為をするデカパンの頭を銃で撃ったりまでします。

 男女問わず現代の若者は、日常に性と暴力という要素を求めています。それは閉塞する時代の特徴でもあります。いつの時代も、社会全体が行き詰まると、人々は個人的な刺激を求めるようになるものです。個人的な刺激とは、身体の快楽であり、精神的な快楽のことです。

 時にそれが、アニメや漫画といった非現実的な世界における誇張を伴った表現につながってきます。性や暴力が誇張した形で表現されることで、受け手の側にカタルシス(精神の浄化)をもたらすわけです。よくぞやってくれた! と。たしかに過激な性や暴力という表現は、いくら抑圧された日常の中で憂さ晴らしとしてやろうと思っても、なかなか実現できるものではありません。アニメや漫画はいとも簡単にそれをやって見せてくれるのです。

 では、なぜ性や暴力が憂さ晴らしになるのか? ここは性と暴力で分けて考える必要があると思います。

ほんとうは知りたい、となりの「性」事情

 まず性についてですが、これは一般に社会の中でオープンに話題にすべきものではないとされています。にもかかわらず、実はそれこそ誰もがかかわり、関心を持っているものなのです。いわば人間の本質だといってもいいでしょう。

 フランスの思想家バタイユは、人間の本質は理性的な部分だけでなく、非理性的な部分にもあると考えました。だから一般にタブーとされているようなことや一見理解しがたいようなことも、人間の本質として向き合うべきなのです。

ジョルジュ・バタイユ(1897-1962)。フランスの思想家。非理性を重視し、西欧近代社会を象徴する理性主義の徹底的な批判を試みた。著書に『エロチシズム』、『眼球譚』等がある。

 エロティシズムもその一つです。通常、エロティシズムはタブー視されるものです。しかしバタイユはそれを肯定的にとらえました。彼は、生に向けられた力同士の交わりをエロティシズムと呼んだのです。「エロティシズムとは死におけるまでの生への称揚である」と。

 社会が隠ぺいしようとするものに対して、これぞ生の本質なのだと叫ぶ。そんな勇気ある態度に人々は歓喜するのです。「おそ松さん」は、日常私たちが大きな声でいえないような性の話を堂々とテーマにしてくれているのです。そこが痛快で面白いわけです。

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Profile
小川 仁志
小川 仁志(おがわ ひとし)
哲学者・山口大学国際総合科学部准教授
1970年、京都府生まれ。京都大学法学部卒、名古屋市立大学大学院博士後期課程修了。博士(人間文化)。米プリンストン大学客員研究員(2011年度)。商店街で「哲学カフェ」を主宰するなど、市民のための哲学を実践している。専門は公共哲学。著書に『7日間で突然頭がよくなる本』、『世界のエリートが学んでいる教養としての日本哲学』(共にPHP研究所)等多数。
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