会社を退職すると年90万超の追加出費

 現在、Fさんの手取り月収は35万円。残業代を含めれば40万円を超えることもあります。仕事優先の生活を続けてきたため、生活費の25万円を差し引いた残りをほとんど貯蓄し、500万円超までになりました。これだけの貯蓄があれば、「もし今の会社を辞めて次の転職先が見つかるまで収入がなくなっても、当面はなんとかなるのでは」とFさんは思っています。

 ですが、 もし会社を辞めて転職活動に専念した場合、毎月どれくらいのお金が必要なのでしょうか?

 会社を退職すると、生活費のほかに、おもに次の支出が変わります。

1. 住民税

 会社員の場合、一般的に住民税は給与から天引きされます。これが退職後にはお住まいの市区町村から請求が直接くるようになります。在職中は天引きされた後に手取りの給与を受け取るのであまり意識しないことが多いのですが、自分で納税するとなると、その税額が思いのほか高く感じます。

 Fさんの場合、毎月天引きされている住民税額は2万円弱です。退職後にはこれを自分で納めることになるのですが、一括または4回(6月、8月、10月、1月)に分割して納めます。一括なら20万円以上、分割でも1回あたり5万円以上を支払うことになります。

 しかも、住民税は前年度の収入をベースに計算されます。退職前の収入に応じた税額が退職後に請求されますから、いざ納税通知書が届くと、請求額にびっくりする人が少なくありません。

2. 国民年金

 公的年金の保険料も、会社員なら給与天引きですが、退職後は自分で納めます。次の仕事に就くまでは国民年金に加入することになりますから、1カ月あたり1万6260円(平成28年度)が全額自己負担になります。

 会社員のときは厚生年金に加入し、収入に応じて保険料が決まります。支払いは会社と折半ですから、自己負担は半額で済みます。Fさんの場合はおおよそ月7万円の厚生年金保険料のうち、3万5000円ほどが天引きされていました。退職して国民年金だけになると、会社員時代に天引きされていた保険料よりも小さくなります。とはいえ、収入がゼロになって自分で納めるとなると、その負担感は意外と大きいと思います。

3. 健康保険

 会社を退職すると、健康保険は、今の会社の健康保険で任意継続するか、お住いの市区町村の国民健康保険に加入するかになります。いずれにしても保険料は全額が自己負担です。こちらも在職中には会社と折半ですから、保険料の負担は今までよりも大きくなります。

 Fさんの場合、現在は約4万円の健康保険料のうち約2万円が天引きされています。任意継続ならこれが約4万円の全額負担になります。国民健康保険の場合はお住いの市区町村によって保険料の計算式が異なりますが、在職中の自己負担額よりは大きくなるはずです。

 これらの税金・社会保険料の負担額を合計すると、Fさんの場合は年額約90万円になります。もちろん1年以内に転職先が見つかればより負担は小さくなりますが、退職後の自己負担が小さくないことは忘れないでおきたいものです。