彼氏ができたら医療保険も……

 ここまで話すと、Eさんは言いました。「そもそも、まだ自分が入院するなんて思わないのですが……」。

 確かに、若いうちは病気やけがのリスクはそれほど高くありません。ですが厚生労働省の調査(※)によると、20歳から39歳までの入院率は、男性より女性のほうが高くなっています。これは、女性ならではのリスクがあるためです。

※ 出所:厚生労働省「平成26年患者調査(性・年齢階級別にみた受療率(人口10万対))」

 リスクのひとつが、妊娠です。妊娠をすると、それまでは至って健康だった人でも、入院や手術のリスクが高まります。たとえば、妊娠の経過によっては切迫流産や切迫早産になり、入院が必要になることがあります。また、妊娠によって体質が変わり、妊娠高血圧や妊娠糖尿病になることもあります。私のお客様でも、これら妊娠中や出産前後のトラブルで入院・手術をするケースがよくあります。

 であれば、「妊娠したら医療保険に入ればよい」と考える人がいるかもしれません。ところが妊娠すると、その経過や状態によって、多くの医療保険は契約ができないか、保障内容に条件が付いてしまいます。また帝王切開で出産すると、5年間は条件がつく可能性があります。ひとたび妊娠すると、しばらくは自由に保険を選べなくなる恐れがあることは知っておきたいものです。

 とはいえ、Eさんはまだ社会人1年目。「キャリアを積むまでは結婚なんて考えられないし……」といいます。

 たしかに、独身の間は妊娠への備えは早すぎるかもしれません。ただ、実際には結婚前に妊娠がわかって「おめでた婚」をするケースが少なくありません。

 私が社会人1年目だった頃、同期の独身女性が日に日におなかが大きくなっていき、ある日、会社を突然休職してしまいました。数カ月後、彼女から送られてきたメールには、かわいらしい赤ちゃんの写真が。「実は、入社早々に彼氏の子どもを妊娠しちゃって。でも、会社に黙って仕事し続けてたら、切迫早産で急きょ入院することになって。そのまま出産して、産休取ることになったんだよね」という話でした。

 この例は少し特殊かもしれませんが、シングル女性も妊娠のリスクがあります。彼氏ができたら、医療保険を検討する余地があるともいえるのです。

女性特有の病気にも用心を

 もうひとつのリスクが女性特有の病気です。特に子宮内膜症、子宮筋腫、子宮頸がんなどは、20代〜30代でもかかるリスクがあります。

 入院率の統計を見ても、女性の入院が多くなる年齢層は、ちょうど妊娠出産期や女性特有の病気が起こりやすくなる時期と重なっています。病気自体は比較的軽く、短期間で治療が完了することが多いのですが、それが原因で、その後しばらく希望通りの保険に入れないことになるのです。

 医療保険を検討する際には、このような女性ならではのリスクを踏まえて考えておきたいものです。

 社会人デビューから、配属先が決まって仕事が忙しくなる前は、長いキャリアや人生での目標をじっくり考えながら、お金や保険のことを勉強するチャンスでもあります。Eさんも、慌てて保険に契約するのではなく、生活で必要なお金やリスクに対応するお金のことを一度整理したうえで、保険が必要かどうかを改めて検討することにしました。

 なお、保険料を数十年支払い続ける保険を検討するには、まずはご自身のリスクや収支の状況を整理することが大切です。その際、FPに詳しく相談したい方は、日本FP協会の「CFP認定者検索システム」を使うと、お近くのFPを探せます。

文/加藤梨里 監修/日本FP協会 写真/PIXTA