働く側が、働き方を決める時代がやって来る

「男女雇用機会均等法からわずか30年。これからは、女性の欲望が新しい産業を興していくはずです」
「男女雇用機会均等法からわずか30年。これからは、女性の欲望が新しい産業を興していくはずです」

――現在、国や企業によって進められている「働き方改革」については、どのように見ていますか。理想の着地点はあるのでしょうか。

 今は、「そこに存在する一人ひとりの人間を、どう生かしていくか」が問われる時代だと考えています。だから、企業側が基準を定めてそれをクリアしている人を雇い、どう動かそうかと考える、「上から目線」の方法では組織がうまくいかない

 私が経営している会社でもそうなんですが、まずはその企業に縁のある人をそろえてみる。そして、一人ひとりの人生の中に「企業で働く」ということを絡ませていくべきです。例えば、「私は今、仕事が楽しくて仕方ないから、自分の10割を企業で生かします」「私は子育て中だから、自分の5割を企業で生かします」という具合です。

 その人の持つ能力やリソースをどのぐらい使って仕事をするのかを、企業側・雇う側が決めるのではなく、あくまで働く側が決めるというのが、本来の「働き方改革」ではないかと思っています。

 これから少子高齢化がますます進み、人口が減少する中、人間の価値がどんどん高まっていくでしょう。

――でも、一方ではAIの進歩によって、仕事を奪われる人が出るのでは、という悲観的な見方もありますよね。

 その見方自体、本来は高いはずの人間の価値を、低くしていたせいで出てきたのではないでしょうか。もしAIやロボットができる仕事なら、なくなってもいいと私は思います。

 その昔、畑は人間が耕していましたが、牛などの家畜が行うようになり、今は機械が行っています。それで、「人間が仕事を奪われて不幸になった」とはならないと思うんです。同じようなことが、あらゆる分野で起こるだけのことです。

 AIがやってくれる仕事が増えて、それを人間がやらなくてもよくなれば、新しい産業が生まれるはず。人間にはそれができると、私は信じています。

 今ある産業には、人間が働かなくていい時間が増えたからこそできたものがたくさんありますよね。デスクワークが増えたからこそフィットネス産業があり、余暇があるからこそゲーム産業やトラベル産業も成り立っています。

 人間はちょっとでも時間に余裕ができると、楽しみたいという欲望が出てきて、その欲望から産業が生まれるんですから、面白いですね。欲望を表現した人に対するソリューションこそが、イノベーションだと思っています。