新入社員の育成担当を任されたものの、教え方に戸惑う先輩社員も少なくないのではないでしょうか。いい関係を築きたいと思いつつも、どう教えたら意欲を持って仕事をしてくれるか分からないという悩みも多いはず。そこで、業務改善・オフィスコミュニケーション改善士の沢渡あまねさんに、新人とのコミュニケーションのコツを伺います。新人を「認める」スキルを取り上げた前回に続き、今回は、新人を「教える」スキルを指南していただきます。
第2回 新人のモチベーションを上げる「認める」スキル
第3回 新入社員に期待を伝えるための「教える」スキル(この記事)
第4回 先輩社員が身に付けたい 新人の仕事を「管理する」スキル(3月13日公開)
第5回 新入社員の正しい「叱り方」 叱るべき状況は2つだけ(3月16日公開)
第6回 「励ます」スキル ペップトークのすごい効果(3月20日公開)
第7回 「電話に出ない」「言われたことしかやらない」新人への声掛け(3月23日公開)
第8回 励ますつもりが逆効果? 「嫌味な先輩」と思われない秘訣(3月27日公開)
メモを取らない、調べない 「学ぶ気がない新人」にどう接したらいいの?
・教えているのにメモを取らない。
・自分で調べずに何でも質問してくる。少しは調べてほしい!
・「これ、教わってないので分かりません」「聞いてないです」と平気で言う。
新人が「メモを取らない」3つの理由
新人がメモを取らないのには、主に3つの原因が考えられます。
(1)仕事の「モチベーションスイッチ」が入っていない
(2)自分の記憶力や能力を過信している
(3)メモを取るべきかどうかが分からない
(1)は、そもそも「仕事に対するモチベーションのスイッチが入っていない」という状態です。その場しのぎで、頭の中の一次メモリだけで仕事をしようとしているんですね。会社で一つでもやりたい仕事を見つけたり、仕事を褒められたりすればやる気が出て、自ら調べたり改善していくようになると思います。まずは、今、モチベーションがどういう状態にあるのかを考えてあげるのが一番大事です。
(2)「自分の記憶力や能力を過信している」は、メモを取らなくても理解できると思ってしまっている状態です。メモを取ることを促すためには、相手に考えさせましょう。「この前この説明をしたけど、今回も自分でできなかったよね。次できるようにするには、どうしたらいいと思う?」と相手に聞いてみてください。「次回からしっかり覚えます」と言われたら、「今回も覚えようとしたけど、覚えられなかったよね」と諭す。 “罪を憎んで人を憎まず”の姿勢で、事実に対して指摘します。
(3)「メモを取るべきかどうかが分からない」の場合は、最初に「説明が長くなるからメモを取って」と伝えるのも手です。育成が上手な人だと、「私も何を伝えたか覚えている自信がないから、あなたもメモを取ってくれる?」と言ったりします。会議でも部下に議事録を取らせるのがうまい人は「私は仕切るのに一生懸命になっちゃうから、メモを取ってもらっていい?」と聞きます。
「私を助けてほしい」という姿勢を取れる人は、心地よく若手を成長させていますね。自らメモを取り始めている部下がいたら「ありがとう、助かる! 後で共有して」と声を掛けてあげてください。そうすると、言われた側も自分がその仕事に参画して価値を出しているんだ、という意識を持つことができます。
「助かる」の一言は、後輩とのコミュニケーションで結構大事です。人はポジティブな言葉を発信しているほうが心地よいので、「~できなくてダメじゃない」よりも「~してくれて助かる」と視点を切り替えたほうが、言う側も気分がよくなりますよ。