家賃交渉は、「下がれば必ずここに決める」と決めた物件だけ

 内見も済ませ、お気に入りの物件が見つかったら、気になるのは「家賃」について。毎月支払うお金なので、「少しでも安くなればうれしい」というのが本音ですよね。では、家賃を下げてもらえるケースは、どのくらいあるのでしょうか。

 「家賃については、残念ながら交渉すれば必ず下がるというものではありません。例えば10部屋あるマンションの中で、9部屋の家賃がここ数年まったく下がっていなければ、今から契約する1部屋だけが下がることは、ほとんどないでしょう。反対に、物件内に複数の空室があり、貸主としても『誰かいい人に早く入ってほしい』と思っている場合は、下がる可能性はあると言えます。このように、家賃が下がるかどうかはケースバイケース。『交渉すれば必ず下がるだろう』と思って強気で交渉するのではなく、まずは不動産会社の担当者に相談してみるといいですね」

 物件によって、事情はさまざま。それらの事情を考慮せずに、「当然下がるだろう」というスタンスで話を進めると、不動産会社や貸主への印象も悪くなってしまいます。賃貸借契約は、貸主と不動産会社と入居者の三者間で、気持ちよく契約を交わせることがベスト。まずは「相談」という形をとって、不動産会社に話をしてみるのが賢い方法です。

 「家賃交渉時に絶対NGなのは、『値下げが決まったのに、その物件に決めない』こと。『試しに言ってみただけでやっぱり契約しない』となれば、貸主の好意をむげにすることにもなりますし、不動産会社との信頼関係を崩すことにもなります。ですから家賃の交渉をするのは、『下がれば必ずここに決める』という場合のみにしてくださいね」

 そして「いい物件を紹介してもらいたい」「できるだけお得に住みたい」と思うのなら、自分が「いい入居者」であることをアピールすることも大切なんだそう。

 「貸主側は、家賃の滞納をしたり、近隣トラブルを起こしたりせず、部屋をきれいに使ってくれる方に貸したいと思っています。そのため、たとえ休みの日であっても、ダラリとした格好で不動産会社へ行くことは避けたほうがいいでしょう。しっかりとお勤めをしていて、部屋もきれいに使ってくれそうな印象をもってもらうと、その印象が不動産会社を通じて貸主に伝わります。家賃交渉をするのならなおさら、この点には気を付けたほうがいいですね」

 貸主は、不動産会社を通じてしか、入居者の人柄を知る方法はありません。だからこそ、不動産会社を訪れる際には、安心感をもってもらえるような服装で、身だしなみを整えていくことが重要です。

 「そして『部屋はいつもきれいに使っていて、以前も退去するときに褒められました。家賃も滞納をしたことがないですし、トラブルを起こしたこともありません』とアピールすることも大切です。その上で、『この物件をすごく気に入っていて、絶対に入居したいんですけど、家賃だけがネックで……』と相談すれば、不動産会社も安心して貸主に家賃の話ができるはずです」

 貸主も不動産会社も、いろいろな入居者を見てきているからこそ、できるだけいい人に部屋を貸したいと思うもの。入居申込書には表れないプラスの情報として、いかに自分が「いい入居者」であることを伝えられるか。不動産会社での対応や印象も、実は部屋探しをする上では大事なポイントなのです。

身だしなみをきちんとして、「いい入居者」であることを伝えるのも大切です (C)PIXTA
身だしなみをきちんとして、「いい入居者」であることを伝えるのも大切です (C)PIXTA

文/青野梢 写真/PIXTA

この人に聞きました
谷尚子
谷 尚子(たに・なおこ)さん
ハウスメイトパートナーズ。2000年にハウスメイトグループに中途入社。仲介営業、仲介店長を経て、同社女性初の管理の現場担当となり、2011年より現職。金融機関・業界団体・大家さんの会等での講演多数。