「人と一緒にいるときが、最も孤独なとき」とは

 例えばウェブ電通報の「食ラボの視点」では、最近は一人で食べる「孤食」が多く見られるとしていました。その中で、「一人の食事は、できれば人に見られたくない」という視点は10代の女性がトップ。

 「一人だと、食べるのが面倒になる」のは30代女性。「自宅や自分の席であれば一人で食事をするのも平気」なのは40代と60代の女性。そして、「一人で食べることは寂しい」と回答したのは70代男性がトップでした。一人に慣れっこの40代や60代女性に比べて、70代の男性の孤独感が高いことがうかがえます。

 こうした一人きりはもちろんながら、大勢の中にいても漠然と寂しさを感じたり、どこか取り残されたような不安を感じたりすることがあるものです。フェイスブックなどのソーシャルメディア(SNS)を使うことで人とつながっている気になりながらも、人と接しない分、寂しさを感じるものかもしれません。

 哲学者キケロは「人と一緒にいるときが、最も孤独なときだ」といったニュアンスの言葉を残し、ドイツの詩人ゲーテは「誰一人知る人もない人ごみの中をかき分けていくときほど、強く孤独を感じるときはない」としています。

 SNSを使うとき、まさにこんな状態かもしれないですね。電車や人ごみの中にいても一人きりの作業になりながら、実はほかの人の「いいね!」や影響力のある人の意見に左右されて集団化する側面を持ちます。ところが、本当は人と一緒にいる実態がないから、むしろ孤独や疎外感を感じてしまう……。

 実は、SNSを使う時間が長い人ほど、孤独を感じているという調査結果が出ています。しかもインスタグラムが一番孤独を感じさせているのだそうです。それってどういうことでしょう。

インスタグラムが一番孤独を感じさせる理由とは

 BBCによると、2017年5月、英王立公衆衛生協会が、SNSが若者の心の健康に与える影響についての報告書を発表。YouTube、インスタグラム、スナップチャット、フェイスブック、ツイッターを比較すると、インスタグラムが最も悪い影響を与えることが分かったそうです。

 英王立公衆衛生委員会は「インスタグラムとスナップチャットが、心の健康にとって最も良くないという結果は興味深い。どちらのSNSも画像重視で、それが若い人の劣等感や不安感を高めている可能性がある」とコメントしています。

 きれいな画像で劣等感があおられたり、楽しそうなイベントの写真が載っている人の「リア充ぶり」に焦りを感じたりすることで、むしろ疎外感を感じてしまうのかもしれませんね。

 一歩引いてみれば、例えば電車の座席にずらりと並んで、みんながSNSに閉じこもっている姿は、誰もが孤独に見えるし、最近は電車の中で会話をする人が少なくなっているように思います。友人が人といる写真を見るときに、自分は機械に向かっている。逆に、自分はこんなに人といるんだと書いているのに、書いているその瞬間は実はひとりになっている……。つながろうとするがために、むしろ孤独を生み出しているようにも思えます。

 日本では具体的な数字やデータは出されていませんが、ジョー・コックス委員会の調査によると、孤独を感じることで生まれるネガティブな影響は、イギリスの経済的な損失として320億ポンド(約4.8兆円)にも上るそうです。

 きっと誰もが抱えているであろう孤独。日本でも、国を挙げて対処してくれたら心強いものです。

 でも、最後に一つ。電話や電球を発明したトーマス・エジソンは、「失敗は、勉強」といったポジティブな姿勢を見せていました。その人がこんなふうに言っています。

 最高の思考は、孤独の中で生まれる
 トーマス・エジソン

孤独とは物事を深く考えるチャンス=写真はイメージ (C)PIXTA
孤独とは物事を深く考えるチャンス=写真はイメージ (C)PIXTA

 「社会の疫病」といわれる孤独。でも、偉人でも誰でも孤独を感じているもの。ならば、自分の向き合い方次第でプラスに生かす。そんなポジティブ思考だってできるってことも、心に刻んでおきたいものです。

文/上野陽子 写真/PIXTA