人気連載「河合薫の『女性のリアル人生相談』」でおなじみの健康社会学者・河合薫さん。執筆や講演、コメンテーター、そして研究者として活躍する河合さんの知的体力の基礎となっているのがノートです。2年前に出版した著書「考える力を鍛える『穴あけ』勉強法」(草思社)では、「重要なキーワードに穴をあけてノートに書き写す」という独自の方法で、日本初の気象予報士試験や東京大学大学院の試験を突破してきた経緯を公開しました。
 これからの時代に求められるのは、知識の暗記ではなく、知識を使っていかに自分の強みを形にしていくか。河合さんが実践するノート術をお聞きしました。

専門分野の「基礎」を築いた穴あけノート

 河合さんはこれまで、いくつかの種類のノートを作ってきたそうです。中でも、ある分野の知識の「基礎」をつくるのが「穴あけ」ノート。参考書などの原本の内容を要約しながらノートに書き、その中のキーワード部分を空白にして(穴あけ)、その答えを右側に書き、繰り返し見ることで頭に入れます。

気象予報士試験の勉強の際に作ったノートの1冊。穴あけ問題のほかにも資料を貼ったり追加の情報を書き入れて、お守りのように持ち歩いていたそう(写真:スタジオキャスパー)
気象予報士試験の勉強の際に作ったノートの1冊。穴あけ問題のほかにも資料を貼ったり追加の情報を書き入れて、お守りのように持ち歩いていたそう(写真:スタジオキャスパー)
■専門分野の基礎知識を築くノート術のポイント
・自分で重要だと思うキーワードに「穴をあける」問題を作り、書いていく
・「穴あけ」問題作りは頭を使わず、毎日決まった時間に習慣化する
・関連情報や追加で得た情報もどんどん書き込み、1冊にまとめる
・常に持ち歩いて、隙間時間があれば問題を解いたり読み返す


 「もともとこの方法を考え出したのは、暗記がものすごく苦手だったからです。大学の受験勉強の時、参考書を読んだり一問一答の問題を解いたりするだけでは、なかなか頭に入ってきませんでした。そこで、参考書の内容を自分なりにそしゃくして単純な文章にし、これは重要だなと思うキーワードの部分を空白にした「問題」をノートの左側に書き、右側にその答えを書く。この「穴あけ問題」をたくさん作ると、すんなり頭に入りました。
 手で書くということも大事です。例えばパソコンに入力したり画面を見たりしても意外と記憶に残りません。忘れないように記録する手段としては、やはり何よりも手書きが勝ります

 自分で作る「お手製」の問題なので、理解度に応じてさまざまな問題が作れるのもポイント。さらに、これを毎日のルーティンにし、習慣化することも重要だといいます。

 「穴あけ問題を作るときは脳をほとんど使わず、考えずにやっていきます。だから夜、疲れていてもできるので、毎日寝る前に10分でも5分でも必ずやると決めていました。全然やらないのだけはダメ、やらないと気持ちが悪いという状態まで習慣化しました。作った問題は翌朝の電車の中で解いたり、昼食の後などの隙間時間に解きました。気象予報士の試験を受けた時は、こうしたノートを3冊ほど作りました」

 穴あけ問題を作っていくと、答えとなるキーワードが増えていきます。それらのキーワードについて疑問に思ったことをさらに調べ、同じノートに資料をコピーして貼ったり、手書きで情報を追加。それによってさらに新しい穴あけ問題が作れ、知識と理解が深まっていったといいます。

 「情報はとにかく1冊にまとめて、これさえあれば安心というノートをいつも持ち歩いていました。そういうノートが時系列で何冊もあります。民間の気象会社に勤めていたときは、穴あけノートとは別に、社内のミーティングの議論で出てきた言葉や気になることを1冊のノートにまとめていました。中表紙が何枚か入っているノートで分野ごとに分けて、興味のあることや分からないこと、人から聞き取ったことなどを書いていました」