得た知識を「発想」「自分だけの強み」につなげるノート

 穴あけノートで基礎を築いた気象学や健康社会学などの専門領域、そして幅広い視点を生かしてコメンテーターとしても活躍する河合さん。“何が飛んでくるか分からない”さまざまな時事テーマについて、独自の知見に裏付けられたコメントとはどのようにして生まれてくるのでしょうか。それを支えているのが、情報を集めるためのコメンテーター用ノートだそうです。

情報を集めるためのノート。1つのテーマに見開き2ページを使って、関連するキーワードを書き入れていきます
情報を集めるためのノート。1つのテーマに見開き2ページを使って、関連するキーワードを書き入れていきます
■知識を発想、強みにつなげるノート術のポイント
・テーマに関連しそうな情報は「キーワード」で書いておく。出典も併せて記録
・「面白い!」「使えそう!」など、情報に触れたその時に書けるように、ノートは常に携帯し、身近に置いておく
・ノートは一度に1冊だけを使い、時系列で管理する


 「『発想』というのは、関係のないこと同士を何かで結び付けることなんです。コメンテーターの仕事では、どんな素材が来ても自分のお皿に盛らないといけないんですが、情報と情報がうまく結び付くと『やった!』と思います。
 ただ、そのためには情報の蓄積が必要。情報の絶対量が少ないと創造的発想に結び付かないので、「面白い!」と思った情報はどんどん集めておきます。集めることで自分の持っている情報と結び付いていくんです」

 知識が枝葉を伸ばすように成長し、結び付いて「アメーバー化」することで自分だけの「強み」が形作られるといいます。チャンスを逃さないようにノートは常に身近に置き、いつでもすぐ書けるようにしているそうです。

 「例えば朝、新聞を読んでいて『面白い』とか『気になる』『重要そう』と思ったらその時、すぐノートに書きます。以前は新聞記事を取っておいて、後で書こうと思っていましたが、その『後で』は永遠に来ないことが分かりました(笑)。テレビを見ていても、本や雑誌を読んでいてもその都度すぐ書けるように、リビングに置いたりバッグの中に入れたりしています」

 ノートに書くときは文ではなく、キーワードで。これは「穴あけノート」と同じです。

 「キーワードさえあれば思い出せるからです。キーワードはすべての手掛かりになります。コラムの原稿を書くときも、思いついたキーワードを並べて構成を考えていきます」

 一つの時事テーマについて見開き2ページを使い、いろいろなキーワードを集めていきます。情報のネタ元、出典についても書いておきます。その他に、これは使える! と思った「いい言葉」を書いておくページなども。

 関連する情報をキーワードで手書きすることで、情報を「自分の中の文脈」からたどる力も付くようです。

 「各ノートの表紙には、記入した期間の日付を入れています。過去の情報を探すときの唯一の手掛かりは日付ですが、『ああいうことを書いたな』というノートは、書棚を探すように必ず探し出せます。例えば原稿を書いていて、『この理論、もっと深めて書かなくては』というときに『あのノートがあったな』と思ったら必ず見つけ出せます。ノートだけでなく本でも、「ああいう本があったな」と思ったら欲しい情報が入っているものを探し出せる。本や資料はジャンルで大まかに分けてはいますが、きっちり整理してはいません。情報が『自分化』されていれば探し出せるということではないでしょうか」

 キーワードを書くことで知識を増やし、そこから生まれた疑問を調べることでさらに関連する知識が増え、立体的になった知識から強みが生まれる。自分の専門性をどう育てればいいのか迷ったとき、河合さんのノートは一つの答えとなるのではないでしょうか。

文/日経ウーマンオンライン編集部