世の中には転職によって手に職をつけ、キャリアアップをかなえた女性たちがいます。そこで、『一生困らない 女子のための「手に職」図鑑』(光文社刊)の著者、華井由利奈が、そんな女性たちの実体験を全4回でお届けします。今回紹介する職業は「歯科衛生士」。管理栄養士から歯科衛生士に転身したMさんは、一度仕事を辞めて専門学校に通い、歯科衛生士の国家資格を手に入れて年収を30万円アップさせたそうです。転職に必要な時間や資金など、具体的に聞きました。

3年間必死に勉強して、管理栄養士から「歯科衛生士」に転身しました
3年間必死に勉強して、管理栄養士から「歯科衛生士」に転身しました

学費は3年で400万円 でも年収はアップ

――安定した給料で人気の高い「歯科衛生士」。Mさんはどうして転職したのですか?

M:以前は、総合病院で管理栄養士をしていましたが、体調を崩してしまい、病院を辞めました。その後、管理栄養士 兼 歯科助手として歯科医院に勤め始め、そこで初めて歯科衛生士という仕事に出合ったんです。豊富な知識で患者さんをサポートしている歯科衛生士に憧れるようになり、再び仕事を辞めて、専門学校に通うことにしました。

 なぜなら、歯科衛生士になるには国家資格が必要だからです。カルテの管理や器具の消毒を行う歯科助手は国家資格がなくてもなれるのですが、実際に患者さんの口に触れる歯科衛生士は専門機関で学び、国家試験に合格しなければなれません。

――入学するために、どんな準備をしましたか?

M:私が通っていた学校は、入学のための試験は面接試験のみで入学自体は簡単でした。でも、在学中の勉強がとにかく大変で。毎朝4時に起きて大量の宿題やレポートを終わらせて、9時から授業。学校が終わったらそのまま歯科医院のアルバイトに行き、20時に帰宅。夕食を食べたら10分でお風呂に入って就寝。そんな3年間でした。

――学費はどのくらいかかりましたか?

M:約400万円です。授業料300万円と、教材費100万円。特に、専門書や模型が高価でしたね。歯の模型も2万円もするんです。トータルで考えると確かに大きな出費でしたが、現在は年収が約400万円になり、前職の管理栄養士の頃より30万円ほど上がりました。

転職するために3年間学生に。かかった学費は400万円。ただ、年収は前職より上がりました
転職するために3年間学生に。かかった学費は400万円。ただ、年収は前職より上がりました

 歯科衛生士は比較的残業が少なく、出勤時間や帰宅時間が大幅に変わることもありません。歯科医院によって勤務時間は異なりますが、私は毎朝8時に出勤。1時間だけ残業して、18時ごろに帰ります。休日出勤もほとんどありません。

 総合病院で管理栄養士として働いていた頃は、シフト制で出退勤時間が異なる上に、休日には頻繁に研修やミーティングが入っていました。それでも気丈に働いている人は大勢いましたが、私は心身ともに調子を崩してしまったんですよね。就職後、1年を過ぎた頃に退職して2カ月間休養していました。

 その頃に比べると、今は毎日とても楽しいです。歯科医院で働き始めた時、「こんなに楽しい仕事があったんだ」と驚いたくらい。前職では、自分の食生活すらままならないのに作ったことのない料理の説明をしたり、食べたいものを無理に我慢してもらったりしていましたが、今は、好きな料理を健康な歯で食べ続けるための指導ができて、幸せですね。

――疲れがたまると視野が狭くなりがちですが、無理をしてまで一つの仕事を続ける必要はないのかもしれませんね。Mさんは管理栄養士から歯科衛生士に転職して得たものが多くあったようですが、マイナス面を挙げるとしたら何かありますか?

M:唯一気になっているのは、産休や育休の取得率です。歯科医院の多くは個人経営でスタッフの数も少ないので、大企業のように何人もの女性社員が産休や育休を利用したという実績がありません。実際に私の勤務している歯科医院でも、今までに産休や育休を取得した人は誰もいないそうです。今後、歯科衛生士として働きながら子どもを産み育てたいと考えている人は、就職先を選ぶ際に産休や育休の取得率を確認してみるといいかもしれません。