いかに効率よく短時間でExcelの作業をこなすか――そのテクニックの基本から裏技まで解説した書籍「ビジネスExcel完全版」(日経BP社)から、ぜひ覚えたい技をピックアップして紹介する。

 今やExcelは、ビジネス現場には欠かせないツールになっている。誰でも当たり前に使っているが、ベテランと入門者とでは「時短力」に大きな差が出て、同じ作業を「5分でささっとこなす人」もいれば「20分も30分も悪戦苦闘する人」もいる。両者の違いは、ちょっとした作業を素早くこなすノウハウの積み重ねだ。

 とはいえ、そのノウハウも分かってしまえば誰でも簡単に駆使できるようになる。いかに効率よく短時間でExcelの作業をこなすか。そのテクニックの基本から裏技まで解説した書籍が「ビジネスExcel完全版」。初心者でも迷わず使い始められるように、詳細な手順を画面を使って説明している。さらにExcelを使い慣れていると思っている人でも、目からうろこの時短ワザを満載した。

 本書からそのノウハウの⼀端を紹介する連載「みるみる腕が上がるエクセルの⼿なずけ⽅」の第3回として、今回は関数編をお送りする。

第1回【時短操作編】
第2回【グラフ編】
第3回【関数編】(この記事)


2割の関数を覚えれば8割の仕事をこなせる

 関数の習得で一番よく効くツボは、覚えるべき関数を「パレートの法則」で絞り込むことだ。この法則は「売れ筋商品の上位2割が売り上げ全体の8割を占める」といった経験則。この考え方をエクセルの関数に適用すると、「よく使う関数の上位2割で仕事の8割をこなせる」となる(図1)

図1 「パレートの法則」とは「よく売れる商品の上位2割が売り上げ全体の8割を占める」といった経験則で、8対2の法則とも呼ばれる。これをエクセル関数に当てはめると、「よく使う上位2割の関数で仕事の8割をこなせる」となる
図1 「パレートの法則」とは「よく売れる商品の上位2割が売り上げ全体の8割を占める」といった経験則で、8対2の法則とも呼ばれる。これをエクセル関数に当てはめると、「よく使う上位2割の関数で仕事の8割をこなせる」となる

 そもそもエクセルの関数には、知っていないと始まらない「キラー関数」がある一方で、その筋の専門家しか使わない「マニアック関数」もある。専門家しか使わない関数を覚えても、一般的な仕事で重宝することはあまりない。それならば、日常業務でよく使う上位2割程度の関数を押さえるのが先決だ。それだけでたいていの仕事をこなせるだろう。

「つまずき」最大の原因、IF関数は必修科目

 今回は業務に使う上で、あらゆる場面でスゴイ威力を発揮するIF(イフ)関数を押さえておこう。根本から理解してしまえば応用力が高まる。

 シートでは「もし~なら~、そうでないなら~」といった場合分けが必要になることが多い(図2)。これができるかできないかで、作成したシートのパフォーマンスは大きく制限されてしまう。ある程度エクセルを使いこなしていたら、さらに覚える関数の数を増やすよりも、さらなる活用のボトルネックとなる関数を攻略目標にしたい。

 「もし400点以上なら『合格』、そうでないなら『不合格』と表示する」といった処理はIF関数で実現できる(図3)

図2 知らないせいでパフォーマンスが極端に制限されてしまう関数がある。制約理論でいうところのボトルネックで、エクセルではIF関数がそれに該当する。図のように「もし~なら~、そうでないなら~」といった場合分けをするもので、マスターすると関数の応用範囲がぐっと広がる
図2 知らないせいでパフォーマンスが極端に制限されてしまう関数がある。制約理論でいうところのボトルネックで、エクセルではIF関数がそれに該当する。図のように「もし~なら~、そうでないなら~」といった場合分けをするもので、マスターすると関数の応用範囲がぐっと広がる
図3 IF関数の引数「論理式」で比較演算子を活用すると用途がぐんと広がる。B列の得点が400以上なら「合格」、そうでないなら「不合格」と表示した(左)。比較演算子には「等しくない」「より大きい」などさまざまな種類がある(右)
図3 IF関数の引数「論理式」で比較演算子を活用すると用途がぐんと広がる。B列の得点が400以上なら「合格」、そうでないなら「不合格」と表示した(左)。比較演算子には「等しくない」「より大きい」などさまざまな種類がある(右)

 IF関数を活用する場合、比較演算子も一緒にマスターしよう。IF関数では「もし~なら」という表現を論理式で表す。論理式とは正しければ真(TRUE)、間違っていれば偽(FALSE)となる数式を指す。その中で2つの数値(文字列でもよい)を比較するのが比較演算子だ。「=」「<」「>」などは数学で使うものと同じだが、「以下」は「<=」、「以上は「>=」、「等しくない」は「< >」なので注意しよう。