本当に大事なもののために、お金を使ってほしい

 とはいえ、これまで家計簿を付けたことのない人が、お金の使い方を直視するには、少し勇気が必要です。

 なぜならお金の使い方には、自分の行動や生活の仕方が、如実に現れているから。無駄遣いをしている自覚や、貯蓄ができていないという認識があればなおさら、「家計簿=生活の通信簿」のような気がして、お金に対する漠然とした「怖さ」や「不安」を感じてしまいます。

 しかし風呂内さんは、こうしたお金の問題を、「お化け屋敷」に例えて説明してくれました。

 「お化け屋敷が怖いのは、部屋が暗くて、お化けがどこに潜んでいるのか分からないからです。もしもお化け屋敷に電気がついて、お化けが私たちを待ち構えている姿が見えたら、それほど怖くないですよね。お金のことも、実はこのお化けと一緒で、『分からないとき』が一番怖いんです」と風呂内さん。

 「家計簿を付けることは、お化け屋敷に電気を付けるのと同じこと。自分が何に浪費していて、どうして貯蓄ができないのか。その原因を、家計簿を付けることで明るく照らし出せば、お金に対する怖さや不安はきっと和らぎますよ」

「家計簿は、絶対につけなければいけないものではありません。納得のいく貯蓄のサイクルができたら、無理につけ続ける必要はないんです」
「家計簿は、絶対につけなければいけないものではありません。納得のいく貯蓄のサイクルができたら、無理につけ続ける必要はないんです」

「家計簿」なんて呼び名でなくてもいい

 そもそも「家計簿」と聞くと、母親がそろばんをはじいて、「今月も赤字だわ……」と、難しい顔をして悩んでいるイメージが浮かぶ人も多いはず。しかし風呂内さんによると、「今月はこんなことにお金を使って楽しんだな!」と、日記のような感覚で家計簿を付けている人もいるんだそう。

 「もしも『家計簿』という呼び方自体に抵抗があるなら、『買い物メモ』や『お金メモリアル』など、自分が楽しんでお金の管理ができそうな呼び方に変えてみるのも一つの手です。重要なのは、自分にとって大事ではないものにお金を使ってしまい、それが原因で、本当に大切なものが買えない状態に陥らないようにすること。家計簿は、それをチェックするために役立ちます」

 自分や家族が一生懸命働いて得たお金を、本当に大切だと思えるものに使う。家計簿は、そのための強力なサポートツールだということが、風呂内さんのアドバイスでよく分かりました。もしもお金のことで気掛かりなことがあるなら、まずは自分と相性の良い方法を選んで、家計簿にチャレンジしてみましょう。そうすればきっと、次の一手が見つかるはず!

取材・文/青野梢 写真/編集部

<この人に聞きました!>
風呂内 亜矢
風呂内 亜矢(ふろうち あや)さん
1978年生まれ。岡山出身。26歳のときに、貯金の80万円でマンションを衝動買いし、慌ててお金の勉強を始めたことがきっかけでFPに。著書は「その節約はキケンです」(祥伝社)、「デキる女は『抜け目』ない」(あさ出版)、「図解でわかる! 投資信託」(秀和システム)など多数。テレビやラジオ、雑誌などでも、お金に関する情報を精力的に発信中。