決算とは「会社版の家計簿」で、決算を読む力はスキルアップやキャリアアップにも役立つ一生もののビジネススキル。「決算なんて難しい」という考えは、もう卒業! コツさえつかめば、誰でも読めるようになるんです。決算の活用法を学んだ前編に続き、「MBAより簡単で英語より大切な決算を読む習慣」の著者・シバタナオキさんに、転職を検討する際に読むべきポイントを伺いました。

*前編はこちら → 英語はあなたに必要ない それより「決算」を読むべし

シバタナオキさん

元・楽天執行役員、東京大学工学系研究科助教、スタンフォード大学客員研究員。東京大学工学系研究科博士課程修了(工学博士、技術経営学専攻)。シリコンバレーでスタートアップを経営する傍ら、noteで「決算が読めるようになるノート」を連載中。経営者やビジネスパーソン、技術者などに向けて決算分析の独自ノウハウを伝授している。2017年7月に書籍「MBAより簡単で英語より大切な決算を読む習慣」を発刊。

転職にも役立つ決算 感覚ではなく「数字」が大切

 転職は、人生の大きな決断だと思います。そういうときに、「何となくよさそうな会社だな」と感覚で判断するのと、「この会社は前年と比べて売上がずいぶんと伸びている。だったら新しいことにチャレンジできる可能性が高いだろう」と、自分なりに分析して職場を変えるのとでは、どちらが納得して転職を決意できるでしょうか?

 新しいチャレンジや成長を求めて仕事に打ち込みたいのか、ワークライフバランスを考えて安定した職場で堅実に働きたいのか。どういう働き方を望むのかは、もちろん人それぞれです。ただ、自分が望む働き方があるなら、それがかなう可能性が高い会社へ転職したほうがいいはずです。決算に書かれている数字からは、そうしたことを読み解くことができるので、まずは具体的に見ていきましょう。

決算から分かる「LINE」の成長率

 今回、例として取り上げるのは、LINEの「2017年 12月期 第3四半期」の決算説明会資料です。同社のように決算を公開している企業の場合、「会社名+決算」でネット検索すれば、無料で入手できます。また決算には、上場取引所に提出する「決算短信」というものもありますが、財務・会計の専門家以外の方には非常に専門的で読みづらいため、パワーポイントなどで要点がまとめられている、「決算説明会資料」を読みましょう。

 では資料の中の、サービス別売上と営業利益の推移を表したグラフを見ていきましょう。

LINE「平成29年12月期 第3四半期決算説明会 プレゼンテーション資料」5ページ目
LINE「平成29年12月期 第3四半期決算説明会 プレゼンテーション資料」5ページ目

 転職のときに最もチェックすべきポイントは、その会社の「成長率」(対前年比)です。例えば、売上額や営業利益額がいくら大きくても、前年と比べて成長していなければ、その会社の経営は「向かい風」の状態にあるといえます。反対に、前年と比べて成長していれば、経営状態は「追い風」であると判断できます。

売上=商品やサービスを販売して得た代金の総額。個人に置き換えて言うと、収入のこと。
営業利益=売上から会社運営に必要な原価や販管費などを差し引いて残った利益。個人に置き換えて言うと、家賃や光熱費、食費などの費用をすべて支払った後に残ったお金のこと。