――会話が楽しく弾んだ相手と、「次に会う機会」を意識して小西さんが心掛けていることはありますか?

 せっかく話してくださったことは忘れないように、その日のうちにメモをします。特に、会食などの場で伺えたご家族の話や趣味の話題、出身地や幼少期の思い出など、その人にとって特別であり、かつ「もう一度話してください」とは気軽に頼めないような話を聞いたときには、記憶が鮮明なうちに、帰りの電車やタクシーの中ではスマホにメモします。ボイスメモ機能も便利ですね。

 メモする内容は例えば、「山田一郎さん。50歳。趣味は登山。お子さんは小学4年生で身長150cmにも。写真も見せてもらった」「鈴木香織さん。もともと○○会社の社長秘書だった。井上さんとは大学同期で『△△会』と命名」「斉藤治さん。三女がハワイで結婚式。お孫さんは2人。今年7月に還暦」といった感じ。

 こういったディテールの情報ほど、しっかりと記録しておくことが大事です。次にお会いできる機会を得たときの会話のきっかけにできるからです。「お子さん、もう5年生ですよね。身長はさらに伸びましたか?」と言うだけで、相手は「覚えていてくれたんだ」と喜んでくださいます。「あなたの話をきちんと聞いていたし、話してくださったことを大事にしています」というメッセージになり、相手との信頼関係を築くのに一役買ってくれます。

「news every.」のチームも、小さな会話から始まるコミュニケーションを大事にしている
「news every.」のチームも、小さな会話から始まるコミュニケーションを大事にしている

 最近も、1年以上前に取材先を紹介してくださった方に拙著をお送りした際、当時のメモを見返して「お嬢さんの○○さんにも読んでいただけるとうれしいです」と一言添えました。すぐに「娘の名前を覚えていてくださったことに感激しました」というお返事をいただきました。

 人は誰もが自分の話を聞いてほしいもの。そして、自分の話を大切にしてくれたと思えると、もっとうれしいもの。そのことを胸に刻んで人間関係すべてに生かしていくと、小さなことでもいろいろな工夫が生まれると思います。私もまだ勉強中ですが、ぜひ皆さんも試してみてくださいね。

 続く第3回では、小西さんのキャリアやライフの転機について伺います。12月初旬に公開予定です。

小西美穂さん

日本テレビ解説委員・キャスター。1969年生まれ。兵庫県出身。1992年に読売テレビ入社。大阪で社会部記者として経験を積んだ後、2001年からロンドン特派員に。帰国後、政治部記者を経てニュースキャスターになり、討論番組など様々な番組を担当。BS日テレ「深層NEWS」では、メインキャスターを約3年半務め、現在は夕方の報道番組「news every.」で、日々のニュースをわかりやすく解説。関西出身の明るく親しみやすい人柄で幅広い層から支持を集めている。

文/宮本恵理子 写真/稲垣純也

「3秒で心をつかみ10分で信頼させる聞き方・話し方」
 著者:小西美穂
 出版:ディスカヴァー・トゥエンティワン
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