――「相手をリスペクトする気持ち」というのは、小西さんが著書でも発信しているコミュニケーションのポイントですね。

 はい。本ではいろんなシーンに合わせて、相手の立場を尊重するコミュニケーション術を紹介していますが、すべての土台にあるのは「相手ファースト」であるという姿勢です。

 相手の立場や思いを大切にしようと考えれば、自然とコミュニケーションの仕方は変わってくるものだと思います。例えば、相手が話しているときに目を見ながら適度な相づちを打てたり、相手の意見に対してすぐに反論せずに「そうですね」の一言を添えたり、自分が話す説明が長くなりそうなときに「結論から言うと……」と話す順序に配慮できたり。すべてちょっとした行動一つなのですが、あるとないとでは印象が大きく変わります。

 私は特に取材記者としての経験が長かったので、「相手にいかに心地よく話をしてもらえるか」を意識することが多かったし、それが今の仕事にもつながっていると思います。どんな方とお話しするときも、目指しているのは相手に「ほんわか」な気持ちになっていただくことです。

「ほんわか」とは好かれる、愛されるということ

――「ほんわか」とはどういう状態でしょうか?

 一言でいうと、リラックスですね。緊張や不安から解き放たれて、のんびり、ふわ~っと心が緩んでいる状態。この状態ができれば、相手は安心して心を開き、こちらが聞きたいことも話してくれます。この「ほんわか」をつくり出す秘訣が、まさに相手の話を上手に聞く力なんです。人は誰でも自分の話を聞いてもらいたいものだし、「この人は自分の話をしっかりと聞いてくれる」と思えた相手には心を開くものだと思います。

 ちなみに、この「ほんわか」という言葉は、関西出身の私からするととても親しみがあるんです。大阪の読売テレビの放送で「大阪ほんわかテレビ」という長寿番組がありまして、大阪の街を芸人さんが歩いて街の人と触れ合ったり、おなじみの喫茶店セットで情報紹介をしたり、番組全体のコンセプトが観る人を「ほんわか」させる世界観なんです。

 番組チーフプロデューサーが同期なので、「ほんわかっていうのは、どういう意味で使っている?」と聞いてみたら、「そうやなぁ、まぁ、『嫌われない』ってことかな」と答えたんですね。なるほどなと思いました。「多くの人から好かれる、愛される」という姿勢が、25年以上続く番組をつくっているんだなと納得しました。

 コミュニケーションも全く同じで、会話が自然に続くと好かれる、好かれると「また会いたい」と思ってもらえる、すると仕事の成果にもつながっていく。

――「ほんわか」なコミュニケーションとして、初心者でもまねできることを一つ教えてください。

 例えば、会話の中に「へ・ほ・は」を入れてみる。「へ・ほ・は」とは、「へぇー」「ほぉー」「はぁー」という納得や感嘆のうなずきの一言です。会話の中で「へ・ほ・は」を挟むだけ、相手は格段に話しやすくなりますよ。

 あと、基本的なことですが、身だしなみも大事です。特に手元は会話中に相手の目に留まりやすいパーツなので気を配ったほうがいいですね。爪先のネイルがハゲハゲだと、それだけで「この人、もしかして仕事が雑?」と印象付けてしまうとしたら、もったいないですよね。私は多少はがれても目立たないような肌色に近いカラーを選んでいます。

 他にもありますよ。ネックレスなど顔の周りにつけるアクセサリーは、ちょっと曲がっているだけで相手の気が散ってしまうので注意が必要です。また、会食の機会が増える年末年始には、靴を脱いだときに見えるインソールが汚れていないかも気を付けたいですよね。

 あ、あと、すごく几帳面そうな人だったのに、チラッと見えたバッグの中身がグチャグチャ……って残念ですよね。資料がドサッと入っていて、飲みかけのペットボトルに、え? まさかのミカン!? とか。(取材陣爆笑)

 ごめんなさい、ついつい関西のノリでしゃべってしまうんです(笑)。

時に関西弁を交えて軽快に話す小西さん。ぐっと引き込まれる
時に関西弁を交えて軽快に話す小西さん。ぐっと引き込まれる

 こんな話をしている私自身も、番組をご覧になった視聴者からいろんなご指摘を受け、反省しながら日々気を付けているんですよ。毎日録画を見返して、「あー、今日は猫背がひどかった……」と反省したら、翌日には本番に持ち込む資料の一番上に大きく「猫背!」って書いて気を付けるようにしています。

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 終始笑顔で気さくに話す小西さん。「相手を楽しませよう」「少しでも役立つことを話したい」というサービス精神が伝わってくる。まさに本のタイトル通り「3秒で心をつかみ10分で信頼させる」人柄であることが分かるが、それが正真正銘のホンモノであると確信できる「事件」が、このインタビューが行われた直前に起こっていた。