チャンスさえあれば、どんな人も活躍できる

――プロップ・ステーションではICT(情報通信技術)使った就労、自立促進事業を手がけていますね。

ナミねぇ 就労チャンスを得たいと考えているチャレンジドや高齢者向けのパソコンセミナーでは、グラフィックソフトやデータベースソフトを教えています。足し算が苦手で、漢字もあまり読めないような知的障害の子も、パソコン使って仕事をしていますし、家族の介護を受けながら、在宅ワークをしている方もたくさんおられます。

――印象的なエピソードはありますか。

ナミねぇ ペンタブレットでかわいいイラストを描く重度障害のお嬢さんが、養護学校の先生と一緒に来られて、グラフィックソフトの使い方を教えたら、とってもいいイラストが描けるようになったんです。私が彼女のお母さんに「感性もいいし、上達も早いから、プロの道を目指しはったらどう?」って言ったら、すごい剣幕で怒るんですよ。「ナミねぇ、この子にそんな夢を見させないでください!」って。

 私は思ったのね、きっと今までいろんな夢を見ても挫折し、目標を持っても挫折し、体が弱いから入退院を繰り返して、やりたいと思ったことも叶わなかった。だから、お母さんはそんなふうに言わはるんやな、と。

 あるとき、カレンダー会社から発注があって、グラフィックソフトを勉強したチャレンジドのみなさんに「こういうお仕事が来てるから、挑戦してみたかったら好きな月の絵を描いて送ってください」とメールでお願いしたんです。

 集まった作品を発注者に見ていただいたら、なんと、彼女の絵が選ばれた。最終的に製品として納入できて、ペイが支払われました。その一週間後くらいに、彼女がお母さんと来たんです。お母さん、私の顔を見るなり「ナミねぇ、次の仕事はいつですか」って(笑)。

――お母さんの考えが180度変わったんですね。

ナミねぇ 母親って子どもが傷ついてほしくなくて、社会の冷たい風に当たってほしくなくて、つい守ろうとする。けど、子どもに可能性があるとわかれば、全力で挑戦させてあげたいって思うものですからね。

「チャンスがあれば、活躍できるんです」
「チャンスがあれば、活躍できるんです」

 日本の社会はチャレンジドにそういったチャンスをあげなさすぎるんですね。「かわいそう」「できるわけない」と思って、チャンスを奪っている。でも、チャンスさえあれば、自分の能力を社会で生かすことができるんです。