「天国ポスト」、「離婚式」や「涙活」の生みの親、寺井広樹さん。活動はそれだけにとどまりません。文房具屋の片隅にある「試し書き」をコレクションして国内外で展覧会を開いたり、笑顔で亡くなった方を見送る「笑顔葬」をコーディネートしたり。さらに、ホラー映画などを観てストレスを解消する「ホラ活」を行なうなど、唯一無二の活動を発信し続けるアイデアマンでもあります。ユニークな発想の源は、いったいどこから来るのでしょうか。共感を集めるいま注目の「天国ポスト」が生まれた理由に続き、今、大注目のヒットメーカーに“ウケる企画の作り方&広げ方”を伺いました。

寺井広樹さん
寺井広樹さん
株式会社たきびファクトリー代表「離婚式」を発案し、約400組の挙式に携わる。2013年1月から「涙活」をスタート。世界108国、約2万枚を蒐集する「試し書きコレクター」でもあり、CNN、ロイター通信、アルジャジーラなどの海外メディアからも注目を集める。『企画はひっくり返すだけ!』(CCCメディアハウス)『泣く技術』(PHP文庫)『「試し書き」から見えた世界』(ごま書房新社)など著書多数

――離婚式プランナーや涙活プロデューサー、試し書きコレクター、さらには、笑顔葬コーディネーターに怪談蒐集収集家と、ユニークな肩書をいくつもお持ちですが、そもそもどういった経歴で今の仕事にたどりついたのですか?

寺井さん(敬称略) 新卒で入った人材派遣会社を3年で辞め、1年半かけて海外22か国を放浪しました。帰国後、“面白いことがやりたい!”と、シャツのボタンから物々交換で宇宙旅行を目指すという「わらしべ長者企画」をブログで始めたんです。ブログブームも追い風になり、10カ月でセグウェイまで到達したものの、失速。その後、2009年4月に離婚式を立ち上げました。以前から、”離婚も新しい門出なのだから、結婚式のように前向きな儀式があってもいい“とずっと思っていたんです。ちょうど離婚する先輩がいたので、必死で想いを伝え、なんとかOKをもらいました。

――離婚式は、最初からうまくいったんですか?

寺井 波乱の幕開けでしたね…。空気が緊迫するなか、参列者には「ふざけてんのか!」と問い詰められ、“やるべきじゃなかった”と後悔しました。でも、ハンマーで指輪を叩き割るセレモニーの直後、暗かった元夫婦の顔が、ホッとしたような明るい表情に変わった。それを見た参列者から自然と拍手が起こったんです。こういう再スタートの方法もあるんだと、皆さんが納得してくれたんですね。
 離婚式を行うなかで、共通して見られる光景が、新郎ならぬ“旧郎”が感極まって号泣する姿でした。ただ、ひとしきり泣くと皆さんスッキリとした表情になる。それを見て、涙の力を実感し、そこから「涙活」の発想が生まれたんです。