耳から入ってくる情報のリアルさを大事にしたい

「ネーミングが成功すれば、企画も成功を確信できます」
「ネーミングが成功すれば、企画も成功を確信できます」

――現代人の隠れたニーズにマッチし、さらに社会性のあるものなら影響力も大きいということですね。寺井さんの生み出す企画は、ネーミングもインパクトがありますよね。

寺井 言葉にはこだわっていますね。企画を考えるときは、ネーミングから入ることがほとんど。離婚式も、「仲人」ではなく「裂人」(さこうど)をつくろうと思いついた瞬間、成功を確信しました。学生時代、友達がいなくて“ぼっち”だったので、お弁当は“便所飯”を経験しましたが、「トイレット男子」(トイレットランチ?)と名付けることで辛い気持ちを和らげていました(笑)。この造語は流行りませんでしたが。

――キツイ状況でも造語ひとつで心持ちが変わりますね(笑)。ちなみに、普段はどんなふうに情報収集しているのですか?

寺井 僕はネットも見ないし、テレビも家に置いていません。それよりも、直接耳から入ってくる情報のほうがリアルだと思うので、電車の中などで隣の会話にそっと聞き耳を立てたり、人に会って話を聞きます。実は、僕がコレクションしている“試し書き”(ペン売り場などによくある試し書き用の紙)も情報源になるんですよ。気になる試し書きを見つけたら、毎回お店の人に確認して、譲ってもらっています。試し書きには、そのときの流行りや人々の心に引っかかる言葉が書かれていますからね。今は、国内外3万点くらいの試し書きをコレクションしていますが、僕の財産です。

新宿の文房具店で見つけた試し書き
新宿の文房具店で見つけた試し書き

――便利なツールにどっぷりつかるのではなく、時にはそれらを捨てて、自分の目や耳で情報を得ることが大事ですね。

寺井 そう思います。いろんな企画を立ち上げていますが、どの企画も所有する感覚がないんです。思い入れがないわけではないけれど、執着がない。だからこそ、未練なく、新しいことに挑めるのかもしれません。新しいことを思いついた瞬間が、自分のなかで一番テンションが上がるんです。

文/西尾英子、写真/小野さやか