価値観を変換することで新しい発想が生まれる

ネガティブな要素から逆転の発想を生み出す
ネガティブな要素から逆転の発想を生み出す

――「離婚」や「涙」といったネガティブなものをポジティブに捉え直すことで、新しい価値観を生んでいます。

寺井 既存の価値観を「ひっくり返す」ことで新しいものが生まれます。これは僕がアイデアを考えるときのベースになっている発想法です。新しい道を歩むための「離婚式」、笑ってポジティブでいるのがいいという価値観をひっくり返した「涙活」、現在進めている「笑顔葬」も、悲しみにくれて泣きながら故人を送り出すのではなく、笑顔で送り出そうという“逆転の発想”ですね。

――企画が浮かばず、悩んでいる人に「ひっくり返しテク」は参考になりますね。

寺井 最初から精度の高い企画を出そうと考えすぎず、とりあえず100本のノックのように数を出し、走らせながら手応えのあるものだけを育てていくのが僕のやり方です。まずは、“質より量”。ダメだったアイデアもストックがたまることで、それらが結びついていい企画が生まれやすくなります。

――多少の練り込み不足でも、まずは発信して走りだすことが大事だと?

寺井 深掘りしたり、肉付けしていく作業は、走り出した後でいいと思っています。いくらいいアイデアを持っていても、頭のなかに留めて行動に移さないのでは、なかったのと同じ。具体的な形になるまでアイデアは価値を持ちません。とりあえず、未完成でもいいからエイッと一歩踏み出すことが大事かなと。“走りながら考えよう”くらいの軽いスタンスでいいと思うんです。

――“練り込み不足を指摘されたり、失敗したら恥ずかしい”と思ったりしませんか?

寺井 でも、恥ずかしさなんてせいぜい数日くらいですよね。やらずに後悔するより、やって後悔したほうがすっきりするし、得るものも多い。離婚式も涙活も、最初は手探りでしたが、徐々にブラッシュアップしていきました。

――「涙活」では、書籍や映画、婚活パーティとのコラボなど、さまざま展開がみられました。ひとつのプロジェクトにとどまらず、多方面に訴求していく。そんな「影響力のある企画」を生み出すコツはなんでしょう?

寺井 世の中の流れとマッチしていること、社会的背景と結びついていることがポイントだと思います。離婚式なら、3組に1組が離婚する時代で円満離婚を望む人が増えていること。涙活は、ストレスの多い現代社会だけれど、泣ける場所がない。シェアの時代で涙も他者と共有するという社会的背景があったことから、メディアでも取りあげられ、支持する人も多かったのでしょう。