自分がつまらなければ、他人にとってもつまらない

――スーさんと言えば、エッセイも大変好評です。ラジオへの出演が話題になって、執筆の依頼が舞い込んだのでしょうか。

 エッセイやコラムを書くようになったのは、実はラジオ出演よりも早いんですよ。きっかけは、「mixi(ミクシィ)」。2000年代後半に「ジェーン・スー」のハンドル名で日記を書いていたんです。内容は、当時働いていた眼鏡会社ことや日常のこと。公開記事にしておけば、誰でも読んでもらえる設定だったじゃないですか、mixiって。それが女性誌の編集者の目に留まり、「連載してみませんか?」というお話をいただきました。2009年ごろだったかな。

 でも、これが順調に行ったわけでもなくて……。編集者から「ここはもう少し上品に書いて」と言われると、言われたとおり素直に直すんです。でも、つまんない文章になっちゃうんですよ、直しちゃうと。編集者のせいではなく、自分がオーダーされた通りに書く能力がなかっただけの話です。

 結局、連載は1年であっという間に終了。そこからしばらく何のお仕事の声がかからなくて……。自分でもつまらないなと思って書いた作品は、誰からも興味を持ってもらえないんだと実感しました。

 それでも書きたいことはいろいろあったので、自己紹介代わりにブログを始めました。そのブログをきっかけに、出版社の方に声をかけてもらえるようになって、2013年に『私たちがプロポーズされないのには、101の理由があってだな』の出版に至るわけです。

いただいた仕事は常に一生懸命やる

――エッセイを拝読していると、いろいろな言葉が胸に刺さるというか……非常に文才がある方だなと感じます。

 よく「文章や言葉にパンチライン(決め台詞)が多い」って言われるんですけど、文章を書くにあたってものすごく努力を重ねて磨いたというわけではないんですよ。自分のことは自分ではよく分かりませんね。

何が転機になるか分からない オファーされたら一生懸命に取り組むだけ (c)PIXTA
何が転機になるか分からない オファーされたら一生懸命に取り組むだけ (c)PIXTA

 mixiやブログに書いた物を目に留めてもらえること自体、運が良かったというのはあると思います。でも、いただいた仕事は常に一生懸命やることは心がけていました。自分から「こういう仕事をやりたいんです!」って売り込みに行ったことはほとんどないです。それがうまく行った記憶もほとんどない。目の前に現れた船に乗り継いで、ここまで来ました。