「私、子ども欲しいかもしれない。」――これはアラサー女子の独り言ではなく、エッセイスト・犬山紙子さんの新刊タイトルです。しかしこのつぶやきのような書籍名に、ドキっとした方も多いのではないでしょうか。
 「産みたいかどうか分からない」状況で3年間悩み続けた結果、今年1月に無事長女を出産するに至った犬山さん。今回、子どもに関する「どうしよう」と戦い続けた彼女に、妊活・出産を経た今の率直な心境を語っていただきました。

犬山紙子
犬山紙子
イラストエッセイスト。トホホな生態を持つ美女たちを描いた「負け美女 ルックスが仇になる」でデビュー。多くの女性から「私の周りにも負け美女がいます!」との声が上がり、共感を得て話題に。「SPA!」や「anan」などにも連載を持ち、テレビやラジオなどにコメンテーターとしても出演中。近著は「私、子ども欲しいかもしれない。」

自然と子どもが欲しいと思えなかった自分

――妊活前から出産まで、リアルな「どうしよう」という悩みをつづられていて共感するところばかりだったのですが、最終的に「子どもつくるぞ!」となったきっかけはなんだったのでしょうか。

 「35歳を超えると高齢出産」ということは知っていたので、30歳を過ぎたあたりから子どものことが頭をよぎるようになっていたんです。でもちょうどその頃、卵巣のう腫が見つかって手術することになりました。そのときお医者さんから、「術後1年間は妊娠しやすいよ」と言われたんです。それでもやっぱりまだ子どもが欲しいとは思えず、「私、ビッグチャンスをみすみすスルーしたな……」と思いながら、なにもせずにいました。

 その後、今度は結婚をきっかけに周りから子づくりについて聞かれる機会が増え、いよいよ真面目に向き合わないとなと思いました。でも本当に困ったことに、「赤ちゃんが欲しい」という欲求が湧いてこない。自分は著しく母性に欠けていて異常なのかと心配になって、周りの女性に聞きまくってみたんです。すると、私のように自然に子どもが欲しいと思えなかった人も案外存在していることが分かった。そうして自分と違う立場の人の妊娠・出産・育児に対する考え方を聞くうちに、私自身の頭の中も整理されていく感覚があったので、じゃあいろんな人に話を聞きながら、自分も産むかどうか考えようと思ったんです。そのさまを丸ごと連載にして本にしてしまった、というワケなんですね。