離婚して家を出ることになってから、友人、知人に「私、住む所も仕事もないのだけど、どこかない?」と片っ端から声を掛けました。すると、「マンションの一室を事務所として借りて新しい事業を始めるので、そこで働いてくれるなら住んでもいいよ」と言ってくれる方がいて、なんと住み込みの事務として雇ってもらえることになりました。

「実は後先考えずに、離婚を決意。住み込みの事務の仕事を見つけたんです」
「実は後先考えずに、離婚を決意。住み込みの事務の仕事を見つけたんです」

――なんだか波乱万丈ですね……。住み込みの事務とはどんな仕事をするのですか。

 仕事内容は「営業事務」と言えば聞こえはいいのですが、実際は職場兼自宅の掃除、電話番、荷物の受け取り、来客の接待など雑務全般です。仕事中は長男は幼稚園に通い、まだ小さかった次男は職場兼自宅で見ながら、両立の日々が始まりました。そこで人生初めてのパソコンにも挑戦。電源の場所すら分からず、メール一本も打てなくて。働きながら仕事の基礎を学んでいく生活が2年ほど続いたのです。

後編に続く

文/井上佐保子 写真/鈴木愛子