フリーになるために必要な準備

 フリーになる前の準備として心がけるのは円満退社だ。辞めても会社といい関係にあれば、辞める前に会社の宣伝部や広報部に行って、「私に仕事させてください」って言ってもいいわけでしょ。そうした仕事から、付き合いのできた印刷会社とかPR会社の仕事も手伝っていくうちに、仕事の幅が広がっていく。カタログの文章を書く仕事なんかもいいと思う。インターネットの時代になって、今、文字の仕事は増えまくっている。すべての企業や自治体が以前よりライターや編集者を必要としているわけで、そこの外注に食い込めるかどうかは大きい。

 一緒に9年も仕事をしているある男性ライターは、オレと会う前、ずっと大手家電量販店のカタログを書いていたの。当時、それが主な収入源だったという。ところが、その仕事がある日突然なくなっちゃったんだよね。それで、別のライターの人に紹介されてオレのところに来るようになった。彼はすごくいいライターなんだ。

 いいライターは、こちらが逐一説明しなくても仕事をこなしてくれる。例えば、「エンタテインメント系の裏方の人をたくさん取材したい」という企画があったとする。ところが、取材して原稿を書いてと投げても、「どんな人がいいか例をください」という言うヤツがいる。そんなの、こっちが調べるヒマがなくて分からないから頼んでるわけでしょ。

 3年前にオレに「師匠」になってくれと言ってきた20代後半の若者も、どんどんフリーの仕事が入ってくるようになっている。契約社員で働いていた出版社を半年で辞め、その後勤めたIT系の会社も1ヵ月で辞めちゃったようなヤツなんだけどね。でも、素直でいいヤツで、自分に来た仕事はなんでもやる。

 今の彼やフリーになりたてのオレは、「なんでもやるいきのいい若者」でしかなかった。でも、従順なやつだよ、ってだけで仕事はくるもんなんだ。そのうち、「仕事が早いよ」って評判になったりして、少しずつ仕事内容がレベルアップしてくる。