妊婦が貧血になりやすい理由

 日本の妊婦の30~40%は貧血だと言われています。先進国の妊婦の貧血は平均18%と言われていますから、日本は先進国では非常に低いレベルでむしろ発展途上国の貧血頻度である56%に近い数字なのです。妊婦が貧血になりやすい理由は、主に二つあります。

・お腹の赤ちゃんに酸素・栄養を送るためより多くの血液が必要となるものの、つわりなどで十分栄養が摂れないこと。
・母体が分娩の際の大量出血に備えるため、血液中における血漿の割合が赤血球よりも増加し貧血がひどくなること。

 つわりは一般的に、胎児の骨格や臓器が形成される妊娠8~11週にそのピークが重なります。そのため、この重要な時期に貧血状態にあれば、胎児に後遺症がでる可能性も出てきます。

 こうした貧血には鉄剤が有効なのですが、妊娠が分かってから鉄剤を飲んでも遅い場合が多い。それは、貧血が改善するまでに最低1、2カ月服用しなければならないからです。妊娠は通常、6週目ぐらいで分かりますが、それから1、2カ月後となると、胎児の重要な体の形成期に貧血の状態のままということになるわけです。

 こうして調べたことは、大学6年生のとき、オンライン専門のニュースサイト、「ハフィントンポスト 日本版」に投稿、掲載となりました。この記事がビューを集めたため出版社の方の目に留まり、『貧血大国・日本 放置されてきた国民病の原因と対策』(光文社新書)の出版に結び付いたのです。執筆の依頼を受けたのは卒業試験や国家試験を控えていた時期で、それらが終わるまで待っていただいたのですが、卒業前には書き終わらずようやく今年4月に出版することができました。

 私は今、研修医として福島県の南相馬市立総合病院に務めています。南相馬市は福島第一原子力発電所から20キロ圏内の地域などが含まれ、そうした地域には避難指示も出されていた場所です(7月12日には帰宅困難区域を除きすべて解除)。

 実は、この病院に務めることになる経緯にも、様々なご縁がありました。それは次回お話しましょう。

文/大塚千春、写真/稲垣純也


『貧血大国・日本』
 著者:山本佳奈
 出版:光文社
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