(C)PIXTA
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6月23日にイギリスでEU離脱の是非を問う国民投票が実施され、離脱派が勝利を手にしました。この結果が世界経済に与える影響を、セゾン投信社長の中野晴啓さんが解説します。これから私たちが意識すべきことも必読です。(聞き手は、ファイナンシャルプランナーの高山一恵さん)

EU離脱は予想外の結果!

高山:6月23日にEUからの離脱の是非を問う国民投票が行われたイギリスで、離脱が51.9%、残留が48.1%と、僅差ではありますが離脱派が勝利しましたね。最近、ニュースや新聞でもこの話題で持ちきりでしたが、中野社長はこの結果を予想されていましたか?

中野:いえ、僕もそうですけど、金融市場関係者は、この結果は想定していませんでした。無党派層が残留に投票して、結局は残留になると思っていたんです。おそらく、キャメロン首相も残留になると思っていたでしょうね。ここ数日のマーケットの混乱がそのことを物語っています。

高山:そうなんですね。実はロンドンに住んでいる友人がいるのですが、その友人からは、東欧などから多くのEU移民がロンドンに入ってくることにより、医療機関も学校も人であふれ、市民生活を圧迫しているので、離脱に傾いている人が多いと聞いていたんです。

中野:確かに、人、モノ、サービスの自由な往来を原則とするEUに加盟している限り、EU移民の流入をイギリスは止めることはできません。イギリスとルーマニアの所得は1:5の差もあり、ルーマニアからロンドンに出稼ぎにきた人たちが、ルーマニアで豪邸を建てているのをテレビで見ました。経済力のない国の人たちがロンドンにきたいと思うのは当然ですよね。なので、高山さんのお友達が日常の生活に不便を感じているというのも分かります。でも、経済的に見ると、EUを離脱することは何のメリットもない。「何てことをやってくれたんだ!」と思っている人は多勢いるはずですよ。

EU離脱の経済的な影響は?

高山:経済的な側面からみると、どんな影響があるのでしょうか?

中野:ビジネスをする側に回ったら、同じ仕事をするのにロンドンの人よりもルーマニアの人の方が安い労働力で雇えるからEU移民は大歓迎なわけですよ。また、EU内であれば、国内取引として関税もかからず、自由に貿易もできましたが、EUを外れるとなると、EUへの輸出には関税がかかるし、あらゆる取引にも厳しいルールが課せられるでしょう。イギリスの輸出の約4割をEU向けが占めている中で影響は避けられないはず。そうなるとイギリスに進出していた国外企業もイギリスがEUから離脱するとなれば、戦略の見直しを迫られ、イギリスから撤退する可能性が大きいでしょう。当然、ポンドの価値も下がり、国内物価が上昇して、英国民の生活は苦しくなります。イギリスに輸出している日本企業にも大きな影響が出るでしょうね。

高山:なるほど。経済全体からすると、デメリットだらけですね。

中野:そうですよ。今回のイギリスの国民投票は、保守的な島国文化の影響がでてしまったといっても過言ではありません。