3 「上下関係」で仕事をしない

ふるさと納税に先駆的に取り組む自治体職員たちとともに。2015年より、自治体同士がふるさと納税の成功事例や最新事情などを報告し合う「ふるさと納税全国サミット」を開催する。(写真/トラストバンク)
ふるさと納税に先駆的に取り組む自治体職員たちとともに。2015年より、自治体同士がふるさと納税の成功事例や最新事情などを報告し合う「ふるさと納税全国サミット」を開催する。(写真/トラストバンク)

 須永さんは、全国の自治体職員をはじめ、ふるさと納税に関わる多くの関係者から信頼され、慕われています。その背景には、「誰に対してもフラットな態度で接しながら、本気で課題を解決しようとする」姿勢があるようです。

 「地域の課題を解決するという目的の前では、立場に上も下もないと思っています。自治体の職員の方や首長の方と接する際も、“業者”と“自治体”という上下関係ではなく、“一緒に頑張りましょう”と同じ目線で課題に向き合うようにしています」

 上下関係にとらわれたり、相手の顔色をうかがうようになったりすると、「この人のOKをもらうためにはどうすればいいか」と考えてしまい、自由な発想ができなくなる。

 「対等な関係だからこそ、“自分ごと”として目の前の課題に真剣に取り組むことができるようになるのです」

 自治体とのフラットな関係性を築いてきたからこそ生まれたのが、「ふるさとチョイス」上で展開している、「ガバメントクラウドファンディング」や「災害時緊急寄付申し込みフォーム」などの事業です。

 「ガバメントクラウドファンディング」は、自治体が行う特定事業に対して、ふるさと納税でクラウドファンディングを行う仕組み。「災害時緊急寄付申し込みフォーム」は、地震などの災害時に、自治体がふるさと納税を通して寄付を集めることができる仕組みです。

 2016年4月に起こった熊本地震には、この仕組みを通して12億9500万円(6月20日現在)を超える寄付が集まっています。

 驚くことに、災害時緊急寄付申し込みフォームは、「マネタイズを一切考えずに立ち上げた事業」だそうです。

 「ふるさと納税を災害時の寄付金として有効活用する仕組みを整えれば、必ず社会の役に立つ」と考えたからこそ、立ち上がった事業です。この事業を通してマネタイズはできなくても、須永さんや「ふるさとチョイス」に対する「社会的な信用」は培われます。

 上下関係で仕事をしないことで、どのような課題も“自分ごと”として考えることができ、世の中にとって本当に意義のある事業を実現することができる。それが結果的に、人や会社の信用にもつながるのです。

1 人生の目標は隠さず伝える

2 「ひとりブレスト」を習慣にする

3 「上下関係」で仕事をしない

 こうした習慣を意識するだけで、目の前の仕事に取り組む姿勢や、人との接し方が変わり、明日から少しだけ“誇りを持てる自分”になれるかもしれません。

 須永さんの著書『1000億円のブームを生んだ 考えぬく力』には、仕事や人生に向き合うためのヒントがたくさん詰まっています。「自分を変えたい」と思うすべての人におすすめの一冊です。

文/藤川明日香(日経WOMAN編集部)


『1000億円のブームを生んだ 考えぬく力』
 著者:須永珠代
 出版:日経BP社
 価格:1728円(税込み)
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