作家・岡映里さんと漫画家・瀧波ユカリさんに聞く、「日常のモヤモヤとの付き合い方」。20代は「世間並み」にとらわれていたというお二人が、今だから伝えたいモヤモヤの手放し方とは?

前編はこちら ⇒ 「朝のニュースは見ない」 ネガティブ思考のやめ方

岡 映里(おか・えり)

作家。1977年生まれ。慶應義塾大学文学部フランス文学科卒。2013年、双極性障害と診断される。仕事を辞め、離婚などの経験を経て、およそ2年間の治療で2015年に症状が落ち着く。以後も続いたうつ状態を、行動療法、認知療法的な視点から改善。現在は、認知療法や精神障害者の福祉政策を学びながら作家活動を行っている。ブログ「自分の地図をつくろう
瀧波ユカリ(たきなみ・ゆかり)

漫画家。1980年札幌市生まれ。日本大学藝術学部写真学科卒業。2004年「臨死!! 江古田ちゃん」でアフタヌーン四季賞大賞を受賞しデビュー。エッセイ「はるまき日記」(文春文庫)、「女もたけなわ」(幻冬舎文庫)など著書多数

心がモヤモヤしたら、体育会系になろう!

――他人を羨んだり、自分と比較して落ち込んだりといった「ネガティブな感情」に悩む女性も少なくありません。お二人は、そんなモヤモヤとどうやって付き合っていますか?

岡:以前は私も、そういう気持ちを抱くことが多かったんです。同世代で大きな文学賞を取った女性を見ると、嫉妬の感情にさいなまれたり。でも今は、全然ないかな。

瀧波:え~、どうしてですか?

岡:さっき「自分を大事にする」という話が出たけれど、自分を大事にすることは、得意なことや才能を謙遜せずに認めることだと思うんです。そして、欠点を受け入れて、できないことや恵まれなかったことで自分を裁くのをやめること。嫉妬をする理由って、「彼女よりも私のほうができるのに」っていう気持ちがどこかしらあるからだと思うんです。だったら、もう素直に自分はそれだけすごいって思ってるんだって認めてしまう。

 私の場合なら、自分の「文章」という才能を認めましたね。その上で、「彼女にあって自分にないのは運と書く絶対量だろう」と違いも見えてくる。書く技量は足りないので努力しようって思えるし、運は続ければ向いてくる。「彼女にいいことがあるなら、私にもそのうちいいことがある」と思えるようになり、嫉妬しなくなったんです。自分は自分でちゃんと頑張っているんだから大丈夫、と思えるようになったんですね。

瀧波:なるほど。私は、いまだに嫉妬の感情を抱くことはありますよ。でも、対処の仕方は前とは違う。嫉妬を自分のエネルギーとして「入荷」するイメージです。

作家・岡映里さん(写真左)と、漫画家・瀧波ユカリさん(右)
作家・岡映里さん(写真左)と、漫画家・瀧波ユカリさん(右)

瀧波:嫉妬というのは、それ自体がエネルギーなわけだから、どうせならいいほうに使っちゃえと思って。同業者への嫉妬なら、「私のほうが売れてやる!」とポジティブに置き換える。もちろんそのときは、グイッと力が必要ですけどね。嫉妬自体は悪いことじゃないから。

岡: それを受け入れた上でどう変換するか、ですよね。

瀧波:心の中でモヤモヤとした気持ちがくすぶるのなら、いっそ「羨ましい!」と口に出して言ってしまうほうがラクになると思う。湿っぽくならないようにゲーム感覚で変換していくのもいいと思う。「いいなあ……」とイジイジするんじゃなくて、ちょっと語尾を変えて「おっ、いいね、いいね、いいね~!」って。「よし、私も行くよ! 行くよ~!」みたいな(笑)。体育会系のノリがいいと思う。

岡:心に松岡修造さんが住んでる感じですね。