自分にとっての「納得のしどころ」を見つける

――子どもがいないことで肩身の狭さや生きづらさを感じている女性たちが、人生の後半戦を自分らしくハッピーに生きるためには、どんなことを意識すればいいでしょうか。

酒井 結局は「自分にとっての納得のしどころ」を見つけることだと思います。ゆっくり回り道をしながらでも、「これもアリだな」というところに落ち着いていく。でもそれは、子持ちの人も同じです。子どもがいることでたくさんの苦労もあるけれど、これでよかったと思えるように、もがきながら子育てしていくのではないでしょうか。

――「納得感のある生き方」を見つけるヒントはありますか?

酒井 自分の納得感や落としどころも、年齢や時代、状況によって変わってくるので、「こうでなければ」とカッチリ決めすぎないほうがラクでいられる気がします。子どもの有無にかかわらず尊敬できる人はたくさんいます。そういう人から生き方を学ぶのもいいと思います。

 能動的に動いて自分なりのスタイルを探すのもひとつの手。いろいろと模索する中で、自分はどんな人間で何に向いているのかが分かってきます。例えば私は、30代から途上国の子どもたちを支援していますが、自分に合った関わり方に気づきました。

――活動に参加するきっかけは何だったのですか?

酒井 ひと言でいうなら「罪滅ぼし感覚」でした。少子化が問題視されている時代に生き、本来なら子どもを産み育てている年齢にもかかわらず、何もしていない自分に対して感じていた罪悪感を、せめて経済的な援助をすることで薄くしたいと思ったんです。人は大人になると、「誰かの役に立ちたい欲求」が生まれるといいますが、そうした気持ちもありましたね。支援している子どもに会いにラオスを訪れたこともあります。

――そうなのですね。ご自身のなかで何かが変わりましたか?

酒井 もちろん子どもは可愛いし、やりとりを重ねることで心は和みます。でも同時に、直接的な手段で彼らの寂しさを癒やしてあげるといったことには向いていないと気づきました。それが分かってからは、あくまで金銭的な支援、社会に対しては納税という形で間接的に支えていこうと思うようになりました。皆がそれぞれ、自分に向いていることをやればいいというのが私の考えです。

――いろいろトライしてみることで、自分なりの答えがみつかるということですね。仕事で後輩を育てることで、そうした気持ちが昇華される人もいます。

酒井 そうですね。私の場合は誰が相手でも、「育てる」ということが向いていないようです。仕事で「編集者さんを育てるべきだ」と言われても、できることといえばせいぜいおすし屋さんに連れていくくらい。でも、果たしてそんなことで育つのだろうかと(笑)。だから、普通にお付き合いさせていただくなかで、何かを学んでもらえるのならばそれでいいかと。