――自分は不向きだと受け止めた上での結論なのですね。ただ「産めるのに産まない」という女性の選択を「単なるわがまま」と捉えたり、「子育て経験のない女性は未熟」という価値観もあり、そうした風潮に肩身の狭さや劣等感を抱くという人もいます。

酒井 子どもがいなくて働いている人は、いわば「有機物を生まずにお金という無機物を生んでいる」わけです。きちんと働いてお金を稼ぎ、税金を納めているというところをよりどころにしようとしているけれど、「無機物より有機物を生産する方が偉い」という観念が世の中にある。でも、そこは開き直ってしまえばいいのでは。未熟でも不完全でも、別にいいじゃないですか。『負け犬の遠吠え』でも書きましたが、最初から自分の負けを認めていれば張り合わなくていいし、ラクでいられます。

 それに、子どもがいる人が皆、人格的に素晴らしいかといえばそんなことはないですよね。逆に、子どもがいるのに自分は不完全だと感じているママのほうがつらいかも。「母親なのに母性がない」とか。お母さん=いい人というプレッシャーに苦しめられる人もいると思います。その点、子ナシ族は、思いきり開き直れるという利点もありますよね。

(次回は6月11日公開)

文/西尾英子 写真/稲垣純也


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