思いや経験からカタチにするまでのスピードの速さ

 多忙な女性たちは洋服をクリーニングに出す時間も、取り行く時間もない。スーツやジャケットを着ていると肩が凝って、毎週末マッサージを予約することになる。毛見さんは海外ブランドのワンピースを愛用していたが、相場が8万から12万と高額。3万円程度で買えるものは市場にないのかとスタッフを含め3人で有楽町のショップをリサーチしたところ、条件に合う商品が存在しないことが分かった。

 「アパレル業界の経験もないし、服の作り方も分かりませんでしたが、市場調査の結果をもとに商社を回って、これは絶対にニーズがあるという話をしました。その時期は商社にもマーケットサイドを持つべきという意識がトレンドとしてあって、タイミングもよかった。もしかしたら化けるかもと思ってくださって、3カ月だけ協力してもらえることになりました」

 ジャージーワンピースを思いついてから鍵となる商社の担当者にたどりつくまで、わずか2カ月。このスピーディーな展開の陰には毛見さんならではの行動力があった。

 友人に教えてもらった大阪のテーラーメイドのお店へ服を作りに行き、「洋服ってどうやって作るんですか?」と素朴に質問。洋服作りにはパタンナーが重要であると教わると、SNSのミクシィでパタンナーのグループを検索、300人ほどのプロフィールを読んで興味を持った20~30人にメールを出して直接会っていった。その時に出会った大手アパレル出身のパタンナーは、今も一緒に仕事をする大切な仲間だ。商社の担当者は、このパタンナーが紹介してくれた人だった。

「3人の知人にまず連絡」するのがコンサルの基本

 「コンサルティング会社のメソッドに『まず3人に電話する』というものがあるんです。たとえば製薬会社に『新薬を発売するので1週間で売り方とデータを出してほしい』と言われたら、その瞬間に友人知人など3人に電話して、知見を持っていそうな人を聞くんですね。そうやって集めた意見をもとに仮説を作って検証作業に入る。そういうスピードと方法論が身についていたのはすごく役立ちました。自分が専門家である必要はなくて、詳しい人からどうやって確実な情報を引き出すかというノウハウはいろんなことに応用できると思います」

 次回は、アパレルブランド「kay me」を世に送り出した毛見さんが洋服に込めた働く女性への思いや経営者としての苦労、さらなる目標について伺います。

文/谷口絵美 写真/鈴木愛子

大阪で開催の WOMAN EXPO 2016で毛見さんの話が聞ける!


「あきらめないで自分らしいキャリアをつかむ方法」


●日時:7月30日(土)15:00~15:45
●場所:ハービスHALL(大阪・梅田)
◆詳細・お申込みはこちら
http://woman-expo.com/osaka/session/session-detail?m=1&eid=15
◆詳細はこちらから ⇒ http://woman-expo.com/

【毛見純子さんインタビュー 全3回】
●第1回「『パリス・ヒルトンならどうする?』で妄想を実現した」
●第2回「『まず3人に電話』仮説と検証から生まれたワンピース」
●第3回「『エレガントは戦法』 服で女性の成功を支援する」

毛見純子(けみ・じゅんこ)

kay me代表兼リードデザイナー。大阪府出身。早稲田大学第一文学部卒業後、ベネッセコーポレーションに入社。5年間の営業職を経て、コンサルティング会社に転職する。プライスウォーターハウスクーパースで組織人事、ボストンコンサルティンググループで経営戦略のコンサルティングに携わる。2008年にマーケティング支援や新規事業開発支援を行う「maojian works」を設立。2011年、社内事業としてアパレルブランド「kay me」を立ち上げた。2015年、ロンドンに「kay me international」を設立し、販売を開始。同年、英国商業会議所主催の「2015アントレプレナー・オブ・ザ・イヤー」を受賞。2016年6月には、日本政策投資銀行(DBJ)第5回女性起業大賞を受賞。
「kay me」はオンラインショップのほか、銀座本店や梅田店、小田急新宿店などの直営店でも販売。
URL:http://www.kayme.jp