「一番伝えたいこと」に向かって聞いていく
番組の冒頭に国谷さんがその日の放送テーマについて語り、前半の映像が流れた後に、スタジオでゲストにインタビューするのが基本的な構成だった。生放送なので、インタビューにも瞬発力や臨機応変な対応が求められる。相手から本音を引き出し、視聴者が気になる点にズバズバと斬り込む国谷さんのインタビュー力には定評があった。ゲストとの会話では、どのようなことを意識していたのだろうか。
「『クローズアップ現代』の26分の放送のなかで、スタジオで私がゲストにインタビューする時間は長くても8~9分。最初にこれを聞いて、次にこんなことを聞いて…というふうに進めていけば、時間を埋めることは容易にできるんです。でもそのやり方では、内容が散漫になってしまって、印象に残らないことがあります」
国谷さんが意識していたのは、「本当に伝えたい、たった一つのこと」へ向かっていくインタビューだ。
「どんなコミュニケーションでも、人が本当に伝えたいことは一つだと思っています。この人が最も伝えたいことは何なのか、事前のインタビューでもそれをできるだけとらえるようにしました。本番ではその“一つ”をどれだけ多角的に――上から下から斜めから、いろんな角度から聞くかということを、ずっと心がけてきました。伝えたいメッセージを一つに絞り込んでいくことで、その人が伝えたいこと、ひいては番組が伝えたいことが、視聴者にしっかり届くのではないかと考えていました」
番組制作担当者との事前のコミュニケーションにも力を注いだ。
「取材の現場で何を感じたのか、番組では伝えられないけれど重要な情報としてどんなことがあるのか、事前の打ち合わせでは、一生懸命聴くようにしていました。それを知ることで、私の視点も複眼的になっていきます。また、長く取材をしている人たちには見えにくくなっている“視聴者はこう思うのでは”という視点を投げかけることで、放送当日の伝え方が変わることもありました」
「自分の言葉で語る」と「意見を言う」は違う
番組制作の背景をできる限り知ろうとすることは、「自分の言葉で語る」という国谷さんの信条にもつながっている。
「私は小学生時代や大学時代をアメリカで過ごし、ニュース番組のキャスターは自分の言葉で語るものだと思って育ちました。ただそれは、“自分の意見を言う”こととは違います。私の個人的な意見ではなく、番組の作り手側として伝えたいことを、自分の思いのこもった言葉で語るということ。“このことについて考えてほしい”“これは大事な問題だ”という、番組として伝えたいメッセージをどこまで明確に、分かりやすく言えるか。キャスター本人が熱を持って話している言葉であれば、視聴者も“話を聞いてみよう”と思うのではないかと思っています」
取材・文/藤川明日香(日経WOMAN編集部) 写真/洞澤佐智子
こちらの記事は日経WOMAN5月号「旬な人」の国谷裕子さんのインタビューを大幅に加筆したもので、全5回シリーズで公開しています。
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