――結局、エリック・クラプトンと出会って約4年後にあなたはジョージ・ハリスンと離婚します。クラプトンの元に行くあなたに、ジョージは「いつでも戻っておいて。何かあったら君を支えるよ」と言ってくれたそうですね。

 ええ、そう言ってくれました。彼は優しくて、繊細で、非常に包容力がある人でした。だからとてもたくさんの女性が彼に夢中になったんです。そして彼も女性が大好きで、たくさんの恋愛をしていました。ハンサムで有名な彼に求愛されて、ノーとは言う女性はいないですからね。妻である私は、もちろん楽しい気持ちではありませんでした。

――たくさんの才能あるロックスターがあなたに恋しました。ミック・ジャガーもあなたに求愛したけれど相手にされなかったと言ったとか。あなたの何が彼らをそんなにひきつけたのだと思いますか。

 ミックが私に恋していたっていうのはどうかしら? 彼の言うことはあまり本気にはできないから。リップサービスじゃないかしらね。なぜかって聞かれても……困ります。自分から働きかけたわけではないし。私がジョージ・ハリスンの妻だったから、モデルをしていたから。そんないくつかの理由があったのかもしれない。

――エリック・クラプトンとは10数年間一緒に暮らしますが、彼のアルコール依存症や度重なる浮気により1989年に離婚します。一人になった時代に撮ったポートレート「Self Portrait -Mirror」はどんな状況で撮影されたのですか?

 エリックと別れた後、一人でロンドンのアパートに住んでいたときの写真です。外出しようと帽子を被り、鏡に映った自分を手元にあったカメラでさっと撮影しました。実はこのときの私は着替えの途中で、ベッドの上、私の脇に置かれているのはスカートなんです。そう、私はこのときまだスカートをはいていないのよ!!(大爆笑)。まさかこの写真が30年後に日本でこうしてたくさんの人に見られるなんて……。この写真を撮ったときの自分にアドバイスしたいですよ、床に散らばったドライヤーやヘアブラシや靴をちゃんと片付けて身支度もすんでから写真を撮りなさいって(笑)。ええ、このなかに演出でやったことは一つもないんです。だからこそ、女性が外出する直前のバタバタしている雰囲気が自然によく出ていると思います。

Self Portrait -Mirror(自画像-鏡)パティ・ボイド撮影
Self Portrait -Mirror(自画像-鏡)パティ・ボイド撮影
「1997年、パーティーに出かける前に撮った自画像。エリックと別れたあとに住んでいたロンドンのアパートのベッドルームで、ベッドに座って撮影」