最前線の仕事を知っているのは現場。現場第一主義を貫く

 コミュニケーションで悩んだ時は、相手をよく観察した。「例えば、報告の仕方でも、ある程度の成果が出たタイミングで報告してほしい人、進捗をこまめに知りたい人など、相手によって好む方法は様々ですよね。相手がやりやすい方法を探ってこちらから合わせていく。面倒に感じるかもしれませんが、相手に合わせて仕事を進めていくことこそが仕事だと私は思っています。結果、ものごとは早くポジティブに進んでいくのですから」
 
 現場で苦労してきた経験があるからこそ、現場の声を重視する。「最先端の仕事を知っているのは現場です。現場の仕事が会社の業績に反映される。だから、できるだけ正確に把握したいし、現場とズレたことを言いたくないんです

 現場主義を徹底する宇田川さんが自ら考案して取り入れてきたのが、事業部全体の「課題管理表」。部内で吸い上げた課題を共有し、解決するためのツールだ。これをまめに更新することで、問題解決のスピードが上がるという。「環境変化が激しい中、常に問題意識を磨かなければ、市場にも置いていかれてしまう。意識付けのためにも取り入れています」

「最善のことを最速で」 メンバーを思うからこそのマネジメント

 統括するNE事業部は今年さらに人員を増強して、ゲーム以外のエンターテインメント事業や海外展開も強化する方針だ。

 マネジメントする上で意識しているのは「最善のことを最速で」。決断は早い方だと自負している。「決断を待ってくれているメンバーのためにも、できるだけ早く結論を出すことを心がけているんです。すぐに答えを出すためには、普段から考え続けていることが大事。でも、くよくよ悩むことはしません。考えても結論が出ない時は気持ちをパッと切り替えるか、周囲に知恵を借りるようにしています」

 時に部下にも厳しい要求をする。「なあなあにはしないから、怖がられていると思います」と笑うが、仕事から離れると親しみやすい“姉御キャラ”を発揮する。部下からは誘われる食事や飲み会にもできるだけ参加し、野球観戦も月数回は行く。「今年はリフレッシュのための旅行計画も立てたいですね。自分へのご褒美を用意したら、さらに頑張れると思います」

 後に続く女性たちには「新しいことにチャレンジを。そして、自分の強みに気づいてほしい」とメッセージを送る。

 「強みがない人なんていない。会社員であれば、どこかの部署に所属して、何かの仕事を任されていますよね。会社がなぜその仕事を自分に任せようとしているのか。きっと何かを期待してのことだと思います。周囲から期待される自分の強みについて客観視することができれば、組織で仕事をする人生をもっと楽しめると思います

文/宮本恵理子、写真/洞澤佐智子

宇田川南欧(うだがわ・なお)
バンダイナムコエンターテインメント取締役NE事業部担当兼NE事業部長。1974年、東京都生まれ。94年、短大の生活科学科卒業後、バンダイに入社。メディア部で商品開発管理事務などに携わり、96年、デジタルコンテンツ事業部へ異動。以後、98年にニュープロパティ開発部、99年にネットワーク事業部とネットワーク分野の仕事を担当。2000年、バンダイネットワークス設立に伴い転籍し、主にパソコンやモバイル向けコンテンツ開発に携わる。06年、同社コンテンツ事業部マネジャーに就任。バンダイナムコゲームスへの統合により転籍し、09年、同社NE事業本部第2コンテンツプロダクションマネジャー。ゼネラルマネジャー、ディビジョンマネジャーを経て、14年に執行役員就任。15年4月より現職。