上司がやるような仕事を振られたら、ラッキー!

 「例えば主任であれば課長の視点で、課長であれば部長の視点で、自分がやるべき仕事、チームがやるべき仕事を考えていくんです。目先の問題解決だけではなく、『この問題の解決のために、本質的に解決しなければならない大きな問題は何か』と全体を俯瞰してとらえる意識を持っていました。すると、『私だったらこうする』という気づきが生まれる。

 言うべきことは上司にも言ってきました。『会社としては、この商品に力を注ぐべきだと思います』『あの人にこういう仕事をしていただいたほうがチームのためになるんじゃないですか』と提案したことは何度もあります」

 見積もりの数字、一つにとっても「私が経営者だとしたら、この金額でこの仕事を頼みたいと思うか?」と突き詰めた。役割をただこなすという受け身ではなく、置かれたステージのずっと上の目線で考える。この考え方のクセが身に着くと、自然と成長する機会をつかむことにもなった。

 「上司がやるような仕事が自分に振られたら、面倒と考えずにラッキーだと思った方がいいですね。一つ上の目線を磨けるチャンスだからです。やってみてできたら、自信にも評価にもつながるじゃないですか」

 常に一歩先の目線で仕事をつくってきた宇田川さんは、36歳でゼネラルマネジャー、39歳でディビジョンマネジャーと組織の階段を登っていく。その間、ネットワークコンテンツ事業の責任者として業績を伸ばし続け、40歳で執行役員に就任した。取締役はずっと携わってきた事業部の責任者を兼任できるという条件に惹かれて引き受け、約200人の指揮をとる。20代の頃、ゼロからの立ち上げに走り回った事業が今まさに花開いている。

文/宮本恵理子、写真/洞澤佐智子

宇田川南欧(うだがわ・なお)
バンダイナムコエンターテインメント取締役NE事業部担当兼NE事業部長。1974年、東京都生まれ。94年、短大の生活科学科卒業後、バンダイに入社。メディア部で商品開発管理事務などに携わり、96年、デジタルコンテンツ事業部へ異動。以後、98年にニュープロパティ開発部、99年にネットワーク事業部とネットワーク分野の仕事を担当。2000年、バンダイネットワークス設立に伴い転籍し、主にパソコンやモバイル向けコンテンツ開発に携わる。06年、同社コンテンツ事業部マネジャーに就任。バンダイナムコゲームスへの統合により転籍し、09年、同社NE事業本部第2コンテンツプロダクションマネジャー。ゼネラルマネジャー、ディビジョンマネジャーを経て、14年に執行役員就任。15年4月より現職。